第9回KG-RCSP合同ゼミ

KG-RCSP合同ゼミは,異なる大学・学部の複数のゼミが集い,メンバーの研究発表と外部ゲストの講演を交えた「多様性と類似性の相乗効果」の場です.毎回,ゼミメンバーの発表に加えて,興味深い研究をしておられる 「今,この人の話を是非聴きたい+学生たちに聴かせたい」と思える研究者をお招きして講演もしていただいています.

第9回目となる今回は,関学の2名の学生が自身の研究成果や研究計画を発表するとともに,前回延期となった名古屋大学情報学研究科の片平健太郎先生をお招きして行います.


新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、今回の合同ゼミはオンラインで行います。


【日時】2020年8月4日(火) 10:00-14:30

【場所】オンライン(Zoom)での開催

第1部:ゼミメンバーによる発表

10:10-11:10 小林穂波(文学研究科博士前期課程2年)
刺激間距離によるフランカー干渉の変化のdiffusionモデル

フランカー課題における視覚的注意処理のモデルとして、試行の最初には刺激全体に広く分散していた注意が、試行内の時間経過に伴って標的位置に収斂していく過程を表現した数理モデルが提案されている (White, Ratcliff, & Starns, 2011)。本研究はベイズ階層diffusionモデルを用いて先行モデルを拡張し、刺激間距離の増加に伴いフランカー刺激による干渉が低下する現象を表現できるかを検証した。その結果、モデルによる予測は実験で得られた反応時間データのパターンと一致しなかった。そこで新たに試行内の情報集積率を標的に類似した情報が入力される情報全体に占める割合として算出するモデルを作成し,検証した。そして,試行開始時の注意分散の形状を正規分布ではなく収斂度がより高い分布で表現することによって,偏心度の増加に伴う干渉効果の減少をよりよく予測できることを示した。

(11:10-11:20 休憩)

11:20-12:20 水野景子(社会学研究科博士前期課程2年)
繰り返し社会的ジレンマゲームにおける意思決定モデル ー統計モデリングによるアプローチー

社会的ジレンマ状況での意思決定を繰り返すと、初回付近は高い協力率が次第に低下することが知られている。しかし、協力低下のメカニズムはよく分かっていない。本研究では、初期協力率の高さを説明できる社会的価値志向性(SVO)と学習モデルを組み合わせることで協力低下のメカニズムを表現したモデルを構築し、二度の実験によるモデルの検証を行った。その結果、①社会的ジレンマの利得構造、②他者の協力に対する期待(信念)の両方を学習するモデルが、そのどちらかを学習するモデルや強化学習モデルよりもデータにフィットすることが示された。

(12:20-13:00 休憩)

第2部:招待講演 13:00-14:30
片平健太郎先生(名古屋大学大学院情報学研究科)
【タイトル】心理学における計算論モデリングと統計モデリングの接点

行動の背後にある計算過程を強化学習モデル等の数理モデルで表現し,データからそのパラメータや構造を推定する手法を計算論モデリングと呼ぶ。計算論モデリングは,社会心理学や臨床心理学などの後半な心理学領域でも用いられるようになっている。一方で,一般のデータサイエンスにおいては統計モデリングと呼ばれる枠組みが中心的な方法論となっている。心理学で伝統的に用いられてきた分散分析や因子分析などの分析手法も統計モデリングの一つとみなせる。計算論モデリングと統計モデリングの境界線は明確ではなく,共通する構成要素も多い。本講演では,演者なりの視点で両手法の相違点や共通点について整理する。具体的な例として,ある種のギャンブル課題における選択行動の分析を取り上げ,選択履歴の影響や認知バイアスの影響を検討した事例を紹介する。それらを通して,計算論モデリングと統計モデリングそれぞれの利点や,使い分けの方法,そして両手法を統合的に用いる枠組みについて議論したい。

2019年度「高等教育推進センター Best Contribution賞」を受賞

センター副長の清水裕士(社会学部教授)が、2019年度「高等教育推進センター Best Contribution賞」を受賞しました。

この賞は、高等教育推進センターが、関西学院大学の教育力向上に貢献した個人・団体を顕彰するものです。統計分析ソフトウェア「HAD」を開発し、本学の統計教育を劇的に効率的にし、かつ、それを手がかりにより深い学びに学生をいざなう役割を果たしたことが高く評価されました。

統計分析ソフトウェア「HAD」
清水裕士 (2016). フリーの統計分析ソフトHAD:機能の紹介と統計学習・教育,研究実践における利用方法の提案 メディア・情報・コミュニケーション研究, 1, 59-73.

第8回KG-RCSP合同ゼミ

KG-RCSP合同ゼミは,異なる大学・学部の複数のゼミが集い,メンバーの研究発表と外部ゲストの講演を交えた「多様性と類似性の相乗効果」の場です.毎回,ゼミメンバーの発表に加えて,興味深い研究をしておられる 「今,この人の話を是非聴きたい+学生たちに聴かせたい」と思える研究者をお招きして講演もしていただいています.聴講・議論への参加は,ゼミ内外,学部生/大学院生/職業研究者等々を問わず,どなたでも歓迎します.

第8回目となる今回は,関学・阪大の5名の学生が自身の研究成果や研究計画を発表するとともに,招待講演は名古屋大学情報学研究科の片平健太郎先生をお招きして行います.


新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、片平健太郎先生をお招きして、広く公開された形で合同ゼミを行うことについては中止としたいと思います。なお、片平先生のご講演につきましては、状況が改善し次第、KG-RCSPセミナーとして行っていただく予定となっております。その際には改めてアナウンスいたしますので、ぜひご参加ください。ただし、ゼミ関係者以外の方はご一報いただければ幸いです。

会場は、参加予定人数が十分距離をとって着席できる広さです。また、消毒用アルコールを設置します。マスクもいくつか準備しますが、着用される方はご自身での持参にご協力ください。また,高熱やひどい咳があるなど体調不良の方は、無理な参加はお控えいただければ幸いです。


【日時】2020年3月6日(金) 13:00-17:30

【場所】関西学院大学西宮上ケ原キャンパス 社会学部202教室

第1部:ゼミメンバーによる発表

13:05-13:35 水野景子(社会学研究科博士前期課程1年)

繰り返し社会的ジレンマゲームの意思決定モデルの探索―統計モデリングによるアプローチ―

繰り返しのある社会的ジレンマゲーム(公共財ゲーム)ではゲームを繰り返すにつれ、協力率が下がることが示されてきた。本研究では、他者が協力するかどうかの期待がゲームを繰り返すにつれて更新され、それが自身の持つ平等性(不平等忌避傾向)との交互作用によって協力に影響を及ぼす意思決定モデルを仮定から導出した。社会性を持たないエージェントを仮定した強化学習モデルをベンチマークモデルとしてモデル比較を行った結果、導出したモデルのほうが社会的ジレンマゲームの行動データをよく説明することが示された。
繰り返しのある社会的ジレンマゲームにおける意思決定モデルを仮定から導出し、構築した本研究の知見は、人の協力行動のメカニズムを検討する基礎研究として位置づけられると考えられる。当日は、実験ゲーム研究において仮定からモデルを導出し、データで検証することの意義について議論したい。また、本研究の知見が今後どのような研究に繋がるかについて意見を頂けると幸いである。

13:35-14:05 柏原宗一郎(社会学部4年)

排外主義の規定要因としてのZero-Sum Belief

日本において、旅行者だけではなく労働者についても外国人は増加傾向にある。しかし、ヘイトスピーチなど外国人に対する否定的な態度が社会的に問題になっている。Esses et al(1998)では「誰かが得れば他の誰かが失う」というZero-Sum Beliefが移民への否定的な態度を予測したとしているが、純粋なZero-Sum Beliefなのか外国人一般に対する態度なのかについての弁別が行われていない。本研究では、より一般的なZero-Sum Belief尺度を用い日本においても排外主義的態度を予測するか検討した。研究1では大学生を対象に実験を行い、外国人IATや外国人増加への態度を統制した上でも、一般的な信念としてのZero-Sum Beliefが効果を持っていた。研究2では一般人を対象にWeb調査を行い、他の排外主義尺度も用いて検討し、外国人増加への態度を統制した上でも効果を持っていた。更に、Zero-Sum Belief尺度についての検討を行い、資源の有限性、二分法的思考法、個人的相対的剥奪といた構成要素に分解されることが示された。

14:05-14:35 小林穂波(文学研究科博士前期課程1年)

学習と経験が視覚的注意の誘導を促進するメカニズムの解明

身の回りの膨大な視覚情報を処理するためには、そのときの目的や課題に応じて情報を取捨選択する必要があります。私の研究では、このような視覚的注意による選択を容易にするために関与しているさまざまな要因のうち、記憶・学習・習慣といった過去の経験による注意誘導に注目して、視覚情報処理における選択機能の解明を目指しています。特に視覚情報の空間的な関係性や確率的情報による情報処理の効率化に関する研究をこれまで行ってきました。今後は視覚的注意研究において一般的な反応時間指標に加えて、眼球運動指標を用いた実験を行い、さらに認知モデリングを活用することで、学習および習慣が注意処理の効率性に及ぼす影響を検証します。本発表ではこれまでの研究成果に基づき、今後の研究計画についてお話しします。

(14:35-14:50 休憩)

14:50-15:20 中越みずき(社会学研究科博士前期課程1年)

困窮層における保守主義の心的基盤の解明

日本において,なぜこれほどまでに保守政権が支持され続けるのかは大きなパズルであり続けている。システム正当化理論では「なぜ困窮している人々が,時として政治的・経済的保守主義を示すのか」という問題に取り組んできた。ただし,従来の研究は,経済を巡って左派と右派の明確な対立が存在する国で検討されており,経済意見がイデオロギー対立となり得ていない日本においても当該理論によるアプローチが可能かは不明であった。

そこで,報告者はまず,日本の有権者を対象としたweb調査によって,他国の先行研究と同様に,格差を是認する傾向である経済的システム正当化 (ESJ) が保守イデオロギーを媒介して保守政権支持を予測することを示し,日本の有権者にも当該理論を適用しうることを確認した。次に,低収入層におけるESJの役割を明らかにするため,第25回参議院議員選挙の直後に調査を行った。その結果,一定程度にESJが高じると,高所得者よりも低所得者の方が保守政党へ投票する確率が高くなることが示唆された。

本報告では上記の2つの研究について紹介するほか,有権者の属性による割り当て法を用いた綿密な調査など,今後の研究の展望について報告する。

15:20-15:50 山縣芽生(大阪大学大学院 人間科学研究科 博士前期課程2年)

新型コロナウイルスによる肺炎への感染対策行動および外国人への排外意識に道徳観の個人差と日常的な外国人との接触頻度が及ぼす影響

2020年1月、中国湖北省武漢市を中心に新型コロナウイルスによる肺炎の感染症が流行し、相当数の感染者及び死亡者が報告され、WHOが緊急事態宣言を表明するなど感染拡大は深刻化している。世界中で刻一刻と事態が変化し、情報が交錯する中で、感染から免れるために人間はどのような行動を選択していくのだろうか。本研究では、道徳心理学(特にPurity; 清浄)の観点から新型コロナウイルスへの感染対策行動および外国人(特に最初の発生地とされる中国の人々)への排外意識に及ぼす影響を時系列的に検討する。本研究は、2020年1月31日に日本人1,200名を対象とした第1波調査が実施されて以降、現在も継続中である。現時点で新型コロナウイルスの感染拡大と収束の予測がつかないため、報告内容も調査状況に応じて一部変更することを予めご了承願いたい。

第2部:招待講演 16:00-17:20(ご講演を延期します)

片平健太郎先生(名古屋大学大学院情報学研究科)

【タイトル】心理学における計算論モデリングの可能性および注意点

行動の背後にある計算過程を強化学習モデル等のモデルで表現し,行動データからそのパラメータやモデル構造を推定する手法を計算論モデリングと呼ぶ。計算論モデリングは,神経科学のみならず,社会心理学や臨床心理学などの幅広い心理学領域でも重要なデータ解析手法となりつつある。計算論モデリングにより,従来の分析手法では無視されていた試行間の変動などからも情報を取り出し,それにより心的過程を推定したり,個人の行動の特徴をとらえることも可能になる。一方で,そこにはモデルの誤設定により誤った結論に到達してしまうという問題もある。本講演では選択課題におけるある種の認知バイアスや反応バイアスを検討した事例を紹介しながら,心理学における計算論モデリングの可能性や,使用の際の注意点についても議論したい。


異例の状況での開催となりましたが、いずれの発表についても、熱心な討論が交わされました。参加してくださいましたみなさま、まことにありがとうございました。今回延期された片平先生のご講演については、時期を調整した上で改めてお伝えします。ぜひご参加ください。

第26回KG-RCSPセミナー

「計算社会科学による人間・社会のわかり方」(笹原和俊氏・名古屋大学)

【日時】2020年2月21日(金) 15:00~17:00
【場所】関西学院大学梅田キャンパス 1405室
【発表者】笹原和俊(名古屋大学大学院情報学研究科、JSTさきがけ)

【概要】計算社会科学 (Computational Social Science)という新しい学際科学が誕生し、注目されている。その背景として、ウェブのソーシャル化やIoTの登場により人間行動が電子化されるようになったことや、ビッグデータを扱う数理・情報技術が発達したことがある。さらに、複雑化社会の新しい理解の仕方が求められていることもあげられる。本セミナーでは、計算社会科学の誕生経緯、アプローチ、最新動向を紹介した後、「分断」をテーマとする研究を紹介する。まず、フェイクニュースの温床となるエコーチェンバーに関する計算モデルについてで、人間の認知特性とソーシャルメディアの相互作用から意見の分極や社会的分断が生じることを示す。次に、食およびLGBTに関するソーシャルメディア分析で、コミュニティごとに特徴的な価値観や道徳観を持つことを示す。最後に、分断を緩和し、集合知を醸成するための技術的試み(Polyphony)について紹介する。


セミナーは,無事盛会にて終了いたしました.笹原先生およびご参加下さった皆様,ありがとうございました.

第25回KG-RCSPセミナー

「社会的ジレンマ実験プログラムの開発と実践:oTreeを用いて」

【日時】2020年1月6日(月) 13:00~15:00, 15:10~17:30
※前後半に分かれており、前半パートは実際に実験プログラムを作る話で、Pythonを実行できる環境(Anacondaなど)の準備が各自必要になります。
後半はすでに作られた実験を使ったデモや簡単な使い方についての紹介となります。後半部分のみを希望の方は15時10分からお越しください。
※参加登録が必要です。下記URLからお願いします。
https://forms.gle/NE9PGm94HM2VSGky6

【場所】関西学院大学(西宮上ケ原キャン

パス)社会学部棟3F 社会心理実験準備室

【発表者】後藤晶さん(明治大学)

【概要】 社会的ジレンマ状況に関する実験は社会心理学や行動経済学の注目を浴びているトピックの一つである.一方で,実験を実施するにはプログラムの作成が大きな壁となっている.従来ではz-Tree(Fischbacher, 2007)と呼ばれる経済実験プログラムを用いることが多いが,基本的にwindows端末でなければ実験ができないなどの様々な制約条件が存在している.

しかし,昨今ではPythonのwebアプリケーションフレームワークであるdjangoをベースにしたoTree(Chen, et.al, 2016)というプログラムの開発が進められている.このプログラムのメリットは広く使われている言語の一つであるPythonに基づいてプログラムを設計できる点,さらにwebブラウザ上で実験を実施できる点にある.

今回のセミナーでは主に実験プログラムの開発と実践に着目して,実際のプログラム開発およびoTreeの操作方法について紹介する.主に対象となるのは以下の方々である.①実際に実験プログラムを作ってみたい方:実際にプログラム体験を予定している.②プログラム作成まではいかなくとも,完成しているoTreeサーバの使い方を学びたい方:公開しているサーバに触れながら,その操作方法を紹介する.③広く,インタラクションのある社会的ジレンマ研究に興味のある方.

さらに,プログラム開発と実践を通じて,これからの新たな実験研究の展開可能性について議論したい.

※実際に実験プログラムを作

りたい方は、前半パートからご参加ください。その場合、Pythonが動く環境をご自身で用意して頂く必要があります。

Pythonの環境を準備するための資料

参加登録をされたら、上のリンクにある資料を必ずご確認ください。


セミナーは,無事盛会にて終了いたしました.後藤先生およびご参加下さった皆様,ありがとうございました.

第3回犬山認知行動研究会議

本センターが第1回から共催している犬山認知行動研究会議が,以下の日程と場所で開催されます.

2020年1月11日(土)・12日(日)

会場:大阪大学中之島センター 703教室

主催:犬山認知行動研究会議実行委員会

参加費無料・予約不要です.プログラムなど,詳しくは会議のWebサイトをご覧ください.

第24回KG-RCSPセミナー

「維新支持の分析」(善教将大・関西学院大学)

【日時】2019年11月22日(金) 15:30~17:30
【場所】関西学院大学(上ヶ原キャンパス)図書館ホール(関西学院大学図書館B1F)
【発表者】善教将大(関西学院大学法学部・社会心理学研究センター研究員)

【概要】2019年4月に行われた大阪市長選と大阪府知事選の結果は、維新の強さを改めて見せつけるものだった。大阪府知事だった松井一郎が大阪市長選に、大阪市長だった吉村洋文が大阪府知事選に出馬するという異例の戦略に対して、多くの識者やメディアは批判を浴びせた。しかし結果は、両選挙ともに維新の候補者が勝利するというものだった。全国的には支持率は低く、それほど選挙に強いわけでもない維新がなぜ関西圏、特に大阪では多くの有権者に支持される政党となっているのか。本報告では、まず、これまで報告者が行ってきた維新支持に関する実証研究をまとめた『維新支持の分析:ポピュリズムか、有権者の合理性か』(有斐閣、2018年・第41回サントリー学芸賞受賞)の内容を紹介しながら、維新が「大阪」の代表者として認識されていることが支持される理由として重要であることを指摘する。その上で、報告者が2019年5月に実施した意識調査の分析を通じて、自民支持層の「票割れ」などにもふれつつ、維新が支持される理由を改めて検討していく。​


セミナーと研究交流会は,無事盛会にて終了いたしました.ご参加下さった皆様,ありがとうございました.

第7回KG-RCSP合同ゼミ

KG-RCSP合同ゼミは,異なる大学・学部の複数のゼミが集い,メンバーの研究発表と外部ゲストの講演を交えた「多様性と類似性の相乗効果」の場です.毎回,ゼミメンバーの発表に加えて,興味深い研究をしておられる 「今,この人の話を是非聴きたい+学生たちに聴かせたい」と思える研究者をお招きして講演もしていただいています.聴講・議論への参加は,ゼミ内外,学部生/大学院生/職業研究者等々を問わず,どなたでも歓迎します.

【日時】2019年7月31日(水) 13:00-17:30
【場所】関西学院大学西宮上ケ原キャンパス E号館102教室

第1部:ゼミメンバーによる発表

13:10-14:00 白井理沙子(関西学院大学小川ゼミD3)
直観的な道徳判断の基盤となる知覚・認知処理の役割の解明

従来の研究は,道徳判断に意識的な思考が重要であることを示してきた。それに反してHaidt (2001) は,道徳判断の主な源泉は情動処理を含む直観にあると主張した。しかし,情動が生起しない場合でも即座に道徳判断が下される場合もあり,直観的な道徳判断のプロセスには不明な点が多い。これを解明するためには,素早く判断を下すうえで重要な役割を果たす初期の知覚・認知処理において,道徳情報がどのような影響を及ぼしているのかを明らかにする必要がある。これまで多くの研究が,ヘビやクモのようなネガティブ情動と関連した刺激は早く気づかれたり,注意を方向づけたりすることを示してきた。道徳と関連した情動情報はこうした生物学的な情動刺激と同じように視覚的気づきや注意処理に影響を及ぼすのだろうか。今回の合同ゼミでは,連続フラッシュ抑制,クラウディング,高速逐次視覚提示法等によって道徳情報が知覚・認知処理に及ぼす影響を調べた研究を報告する。また,個人の倫理的価値観の多次元的な組み合わせからなる政治的信条にも焦点を当て,個人の政治的信条と知覚・認知処理の関連性について検討した研究も報告する。

14:05-14:55 大工泰裕(大阪大学社会心理学研究室D3)
詐欺の手口に関する情報が詐欺への抵抗に及ぼす影響

詐欺被害は長きに渡る社会問題の一つであるが、未だにその解決策は見つかっていない。最大の謎としてあげられるのが、なぜこれほどまでに典型的な手口が知れ渡っているにもかかわらず、被害が増え続けるのかということである。実際、警察庁の調査では被害者のおよそ7割の人々が手口を知っているのにもかかわらず騙されたと報告している。この謎を解明しなければ、広報啓発などの詐欺対策は効果を得られない。
発表者はこの謎を解明すべく、「詐欺被害の手口の情報をどう処理しているのか」、「得られた手口の情報をどのように使用しているのか」という二側面に着目し、研究を行ってきた。当日はこれらの研究結果を報告するとともに、今後の方向性についても議論したい。

15:00-15:50 中村早希(関西学院大学小川ゼミ大学院研究員・大学院奨励研究員)
複数源泉・複数方向の説得状況における説得の2過程モデルの適用可能性

複数人から異なる方向に説得される状況(例えば、選挙)は多々あるにも関わらず、これまでの説得研究では、1人から説得を受ける状況ばかりが注目されてきた。発表者は、複数人から異なる方向に説得される状況での態度変容プロセスの解明を目的とした研究を進めている。本発表では、説得の受容プロセスに関する主要なモデル(説得の2過程モデル)が、この状況においても適用可能であるかどうかを検証した実験について紹介する。具体的には、(1)説得者間で唱導方向が必ずしも対立しない場合(「AとBどちらが良いか」)と(2)対立する場合(「Aについて賛成か、反対か」)の2つの場面を用いて検討した。これらの研究成果について発表し、議論を行いたい。

第2部:招待講演

16:00-17:30 北村英哉先生(東洋大学)

【タイトル】穢れ忌避について

【概要】人の道徳基盤やモラルのあり方について、さまざまな議論が見られるが、清浄さ(purity)について、さらに詳細な研究が必要であろうことは、村山・三浦(2019)においても示されている。道徳基盤のあり方と共に、日本文化を十分勘案した清浄さを検討するにあたって、「穢れ」概念にも配慮し、新たな清浄志向/穢れ忌避傾向尺度を構成した。穢れに関わる実験刺激に対するネガティブ反応の検討など実験知見も交えながら、穢れ忌避傾向の検討結果を示す。


いずれの発表・講演についても熱心な討論が交わされました。北村先生、ご参加下さった皆様ありがとうございました。

第23回KG-RCSPセミナー/第36回政治コミュニケーション研究会

夏だ!調査だ!!実験だ!!!

今回のセミナーは、小林哲郎氏(香港城市大学)および稲増一憲(関西学院大学)が、メディア・コミュニケーション研究の新しい知見をそれぞれ発表する、2本立ての構成でお送りします。個々の知見に加えて、日本のメディア・コミュニケーション研究をめぐる総合的なディスカッションを行うことができればと思います。学問分野を問わず、関心のある方のご参加をお待ちしています。

【日時】2019年7月26日(金) 14:30~17:45
【場所】関西学院大学(上ヶ原キャンパス) E-102教室

【発表者】小林哲郎氏(香港城市大学)
【発表言語】日本語
【タイトル】党派的な選択的接触の境界条件:文化とアイデンティティの観点から
【概要】党派的な選択的接触はアメリカを中心とする政治コミュニケーション研究では繰り返し報告されており、オンラインエコーチェンバーや政治的態度や感情の極性化の一因として考えられている。しかし、アメリカ以外の文脈では党派的な選択的接触は必ずしも強く見られていない。本報告は、文化とアイデンティティという2つの要因に注目し、党派的な選択的接触の境界条件を明らかにすることを目的とした一連の研究を紹介する。まず、擬似オンラインニュースサイトを用いてアメリカ、日本、香港で行われた比較文化研究では、アメリカでは選択的接触が強く見られるのに対して、香港では比較的弱く、日本では見られないことを示す。次に、香港における一連の研究から、香港人という単一アイデンティティを持つ人は選択的接触を示すのに対して、香港人と中国人のデュアルアイデンティティを持つ人の間では選択的接触は見られないことを示す。さらにこのアイデンティティによる差異は政治的なソーシャルメディア利用が態度と感情の極性化に及ぼす効果を調整しており、デュアルアイデンティティを持つ人はソーシャルメディアを政治コミュニケーションに利用するほど、政治的態度や感情が「非極性化」することを示す。これらの一連の研究を通して、アメリカにおける研究の強い影響を受けて「定見」となりつつある党派的な選択的接触の普遍性について議論したい。

【発表者】稲増一憲(関西学院大学)
【タイトル】自他への社会的影響の認識の差異:マスメディアの第三者効果研究の新展開を目指して
【発表言語】日本語
【概要】人間が他者に対するメディアの影響力を自身への影響力と比べて過大視するマスメディアの第三者効果の存在は、メディア・コミュニケーション研究において、たびたび確認されてきた。一方で心理学においては、このような自他への社会的影響の認識の差は、マスメディアだけでなく対人的コミュニケーション等においても見られる一般的な現象として捉えられている。しかし、いずれの分野においてもなぜこのような現象が起こるのかについて、十分や説明が行われているとは言い難い。そこで本研究は、自他への社会的影響の認識の差をもたらす要因を探るべく、複数のWeb調査によって検証を行った。まず、有力な説のひとつとされてきた自己奉仕バイアスに基づく説明については、自尊心や自己愛と自他への社会的影響の認識の差に相関が見られず、社会的に望ましい情報について自己への影響力を過大視する第一者効果も再現されなかったことから、少なくとも日本においては成り立たない可能性が示唆された。また、政治的意見についての家族・学校教育・他者との会話・インターネット、およびマスメディアについての自他への影響力の差の認識を測定したところ、マスメディアの影響力の差の認識のみが他の情報源より大きかった。これらの結果は、一般的な自他への影響力の認識の差とマスメディアの第三者効果特有の部分を弁別した上で、それぞれをもたらす要因についてさらなる検証を行う必要性を示している。

■ 懇親会(18:30~)も西宮北口周辺で予定しております。ぜひご参加ください。
懇親会のみの参加も歓迎いたします。
■ 懇親会参加人数把握のため、以下のフォームから【7月19日(金)までに】事前登録をお願いします。
なお、研究会自体には事前登録がなくても参加可能です。
https://forms.gle/7ZFd4XxCLr6azT7P6


いずれのセミナーについても活発な意見交換を行うことができました。小林さん、ご参加下さった皆様、ありがとうございました