アンケート調査のご報告

2019年3月4日に、兵庫県赤穂市にお住まいの2723名の方々に「社会意識に関するアンケート」を郵便にてお送りしました。3月31日までに、1229名の方から回答をご返送いただくことができました。

私たちは、災害リスクや景気状況の変化などによって日々の生活に様々な問題が起こっている昨今、国政のみならず地方政治と私たちの関わりのあり方に改めて目を向ける必要性を痛感し、2014年以来、赤穂市を対象のひとつとして学術研究を進めてきました。そして、今回このようなアンケート調査を実施させていただきました。

集計結果をこちらで公開いたしました。特に注記のない数値の単位はすべてパーセント(%)です。どうぞご覧下さい。改めて、多くの方々にご協力を賜りましたことに、心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

関西学院大学社会心理学研究センター

客員研究員・大阪大学大学院人間科学研究科教授・三浦麻子
センター長・関西学院大学社会学部教授 稲増一憲

※2019年5月18日付「赤穂民報」紙にてご紹介をいただきました.

論文掲載決定

センターメンバー3名の共著による以下の論文が『社会心理学研究』に掲載されることが決まりました.

稲増一憲・清水裕士・三浦麻子 (2019). 評定尺度法の反応ラベルによる影響の補正:公的組織への信頼に関する社会調査を題材として 社会心理学研究, 35(1).

本研究は、東日本大震災が公的組織への信頼にもたらした影響の検証を通じて、評定尺度法において、反応ラベルが異なる2種類の調査で得られた値を比較可能にする方法を提案する。震災をまたぐ世界価値観調査とアジアン・バロメーター調査においては、いずれも「自衛隊」「警察」「裁判所」「テレビ」「政党」「国会」という6つの組織への信頼が測定されているものの、評定尺度の反応ラベルが異なる。そこで本研究は、この影響をベイズ統計モデリングによって補正することで、信頼の変化について検証した。その結果、「自衛隊」への信頼が上昇したのに対して、「裁判所」「テレビ」「政党」「国会」への信頼が低下したことが明らかになった。本研究が示したような統計モデリングを用いた社会調査データの補正は、震災の影響の検証に留まらず、短期的あるいは長期的な社会の変化について検証する際に有効である。

この研究は,マスメディアへの信頼の測定にワーディングがもたらす影響を大規模社会調査データとWeb調査実験の分析を通して明らかにした稲増・三浦(2018)を発展させ,それを統計モデリングにより補正する手法を提案するものです.著者最終稿とマテリアルを PsyArXiv からどなたでも閲覧・ダウンロードいただけます.

新体制のお知らせ

2019年4月1日より,以下の通りセンター運営体制が変更となりました.

センター長:稲増一憲(社会学部教授)
センター副長:清水裕士(社会学部教授)

センター長就任挨拶(長い)はこちらをご覧下さい.

2018年度までセンター長を務めた三浦麻子は,大阪大学大学院人間科学研究科に移籍しましたが,引き続き客員研究員として活動に関わります.

今後ともよろしくお願いいたします.

第6回KG-RCSP合同ゼミ

KG-RCSP合同ゼミは,異なる学部の複数のゼミが集い,メンバーの研究発表と外部ゲストの講演を交えた「多様性と類似性の相乗効果」の場です.毎回,ゼミメンバーの発表に加えて,興味深い研究をしておられる 「今,この人の話を是非聴きたい+学生たちに聴かせたい」と思える研究者をお招きして講演もしていただいています.聴講・議論への参加は,ゼミ内外,学部生/大学院生/職業研究者等々を問わず,どなたでも歓迎します.

【日時】2019年2月27日(水) 13:00-17:30
【場所】関西学院大学西宮上ケ原キャンパス F号館104教室

センター長あいさつ

第1部:ゼミメンバーによる発表

13:10-13:35 小林穂波(小川ゼミB4)
自己に関する概念の変化が視覚的注意による情報選択に及ぼす影響

自己についての他者との関係性に基づく概念の操作が高次認知処理を変化させることが示されている一方で、視覚的注意に及ぼす影響については十分な検討がなされていません。本研究では、自己観を操作する課題の実施後に視覚的注意の焦点の大きさを測定し、相互協調的自己観を一時的に活性化した群における注意の焦点の大きさが、相互独立群自己観を活性化した群に比べて大きいことを示しました。この研究に加え、本発表では自己観の変化によるグルーピングへの影響を調べた実験の結果についても報告します。社会性の強い概念である自己観が、比較的低次の情報選択メカニズムである視覚的注意に及ぼす影響を検討する実験を今後も実施する予定です。皆さまからさまざまなご意見をいただき、議論をさせていただければ幸いです。

13:35-14:00 田島綾乃(稲増ゼミB4)
オタクが持つメタステレオタイプによる趣味開示抵抗感の検討

オタクと呼ばれる人々の存在は、いまや少数派とは言えなくなってきている。しかしオタクたちは自らの趣味を隠すような行動をとることが多い。本研究では、オタクが持つメタステレオタイプが、オタク趣味の開示に及ぼす影響について明らかにすることを目的とし、Twitterのオタク活動用アカウントを通じて募集したWebアンケートによってオタクの人々に対して調査を行った。過去にオタクであることで他者から自分が排斥された経験や、誰かが排斥されているのを見たことがあるという社会的学習によって、一般人(オタク以外の人々)からオタクは「根暗」「一般常識に欠ける」「話しかけにくい」と思われていると思うメタステレオタイプを強く持っていることが分かった。また、それらのネガティブなメタステレオタイプを持っていると、他者に趣味を話す行為や公共の場でグッズを身に付けるなどの行動によって、趣味を開示することに抵抗を感じるという結果が得られた。

14:00-14:25 長谷川凜人(三浦ゼミB4)
うわさが実現することが感情及び行動に及ぼす影響―「白紙物語」が現実になるとき―

本研究では、不安を喚起させるようなうわさの内容と類似する状況に遭遇することが個人の感情と行動に及ぼす影響により検討した。参加者は不安を覚えるうわさを読んだ後に事後調査に回答したが、その際に途中から質問紙が白紙になるような状況を設定した。事前に読ませたうわさがその状況に関連したものだった群とそうでない群で、白紙の出現が感情と行動に及ぼす影響に関する生理的指標と主観的指標を測定、比較した。分析の結果、うわさが現実になることは、個人をより不安にさせ、伝達意図を高める可能性が示された。

14:35-15:00 牧野巧(三浦ゼミB4)
欺瞞意図はコミュニケーション中の強調表現の使用頻度や聞き手の欺瞞検知に影響するか?

本研究では,欺瞞意図が発話中の強調語の出現頻度に影響を実験的に検討し(実験1),また欺瞞意図を持った発話が聞き手の欺瞞性検知に与える影響についても検討した(実験2)。実験1では、ある商品をアピールする課題における強調語の出現頻度を欺瞞意図を含む3条件間で比較したが有意差はなかった。実験2では、実験1の映像データが割り当てられていた条件を理由とともに推測させたが、その正確性は低かった。強調表現を手がかりとした参加者も多くなく、また正確性にも寄与していなかった。これらの結果は過去の欺瞞研究の結論を覆すものではなかった。

15:00-15:25 水野景子(清水ゼミB4)
人はなぜ罰が存在している公共財ゲームにおいて非協力をするのか―確率的に罰がある状況での非協力と損失の確率価値割引—

公共財ゲームでの罰の効果に関する研究は、非協力が必ず発見されるという前提のもとで行われてきた。しかし、現実場面では必ずしも全ての非協力を発見できるわけではない。そこで本研究では、罰が確率的に与えられるように設定した公共財ゲームでの非協力に、起こる確率が低くなるとその価値を実際よりも低く見積もるバイアスである損失の確率価値割引の個人差が与える影響を検討することを目的とした実験室実験を行った。結果、損失の確率価値割引率の大きさが大きい人ほど非協力をしやすく、また、罰が与えられる確率が低いと教示された条件(30%条件)では、罰が与えられる確率が高いと教示された条件(60%条件)に比べて確率価値割引が非協力率に与える影響が大きくなった。この結果から、罰が与えられるかどうかが不確実な場合、罰による損失が正しく認識されておらず、実際よりも損失が低く見積られた結果、非協力を選んでいることが示唆された。

15:25-15:50 中越みずき(OCUB4)
責任帰属と生活保護に関する情報への接触が生活保護政策への賛否に及ぼす影響

本研究は, 情報の枠組み(フレーム)が人々の意思決定に影響するというフレーミング効果に着目し,生活保護に関する情報への接触および責任帰属が生活保護政策への賛否に影響するのかを検証することを目的とした。Iyengar (1990) の研究から,生活保護に対して擁護的か批判的かといった情報内容を問わず,制度に焦点を当てるテーマ型フレームは政府への責任帰属に,受給者に焦点を当てるエピソード型フレームは受給者への責任帰属に影響すると予測した。実験の結果,大まかな予測は支持されなかったが,エピソード型フレームの場合に,批判内容によって受給者への解決責任帰属が喚起され,結果として支援政策に反対するというプロセスが確認された。これは,受給者に焦点を当てた批判的な情報が,当事者に対する「自助努力」への要求を強め,支援政策への支持を低下させることを示唆している。

第2部:招待講演

16:00-17:30 武藤拓之さん(日本学術振興会特別研究員DC1・大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程3年)

【タイトル】視空間イメージ操作研究への挑戦:多面的視点のススメ

【概要】視空間イメージの操作を支える認知メカニズムの解明は,認知心理学における古典的な研究テーマの1つである。視空間イメージの操作には,物体を回転させるイメージ (物体の心的回転) や,他者が見ている風景を想像する過程 (視空間的視点取得) などが含まれる。本講演では,始めに視空間イメージの操作に関する研究の大枠を説明した後で,講演者が行った2件の研究について詳しく紹介する。1件目は,自分とは異なる視点から見た物体の位置関係を把握する過程 (空間的視点取得) においてイメージ操作がどのように使い分けられるのかを実験的に検証した研究である。2件目は,文字の正像・鏡像判断課題 (心的回転課題の1種) を行うときの認知過程を説明する既存のモデルの正しさについて,ベイズ統計モデリングを利用して検証を試みた研究である。本講演を通じて,研究におけるロジックの立て方や,予想外の結果が得られたときのワクワク感,統計モデリングがもたらす新たな研究の可能性についてお伝えできれば幸いである。

第3部:研究交流会

18:00~ 関西学院大学会館 レストラン「ポプラ」


いずれの発表・講演についても熱心な討論が交わされました.研究交流会でも,さらに活発な意見交換を行うことができました.ご参加下さった皆様,どうもありがとうございました.

第22回KG-RCSPセミナー

KG-RCSPセミナーには,主に2つのテーマがあります.1つは,社会心理学およびその関連領域で先端的でユニークな研究を精力的に行っている方をお招きして,その研究の面白さを存分に語っていただくこと.もう1つは,社会心理学研究に応用可能なテクニックを実践的に学ぶ機会を持つこと.こうした機会を,特に大学院生や学部生など若い方々に積極的に提供すること(そして,主催者自身が楽しむこと)を目的としています.

「Qualtrics+Rによるコンジョイント分析」(宋 財泫氏・早稲田大学)

【日時】2019年2月20日(水) 13:00~17:30

【場所】関西学院大学西宮上ケ原キャンパス社会学部202号教室

【発表者】宋 財泫 (ソン ジェヒョン)氏(早稲田大学高等研究所)

【題目】 Qualtrics+Rによるコンジョイント分析

【概要】 近年、社会科学においてコンジョイント分析(Conjoint analysis)が広まりつつある。マーケティングなどの一部の分野で使われてきたコンジョイント分析だが、数個の選択肢から一つを選ぶ行為は、マーケティングだけでなく、社会科学全般との親和性が高い。また、調査観察データに基づく研究で指摘されてきた「社会的望ましさバイアス(Social Desirability Bias; SDB)」を最小化しながら仮説検定ができる点は、コンジョイント分析の強みである。本セミナーではコンジョイント分析について簡単に紹介し、Qualtricsを用いたコンジョイント実験の実施とRによる分析の実行と解釈について解説する。

参加をご希望の方は2月13日までに、以下のアンケートフォームを通じてご登録ください。
https://kwanseisocpsy.au1.qualtrics.com/jfe/form/SV_bIwQLKS9iEbYrat

なお、当日ノートPCをお持ちで、関学LANやEduroam等を用いたインターネットアクセス、およびQualtricsアカウントをお持ちの方に対しては、コンジョイント実験やRによる分析について実習に参加していただく予定でおります。それ以外の方についても、もちろんセミナーへの参加は可能ですが、ゲストアカウントの発行等はできませんので、当日の実習はできません。予めご了承ください。

セミナー終了後に発表者を囲んで研究交流会を開催します.ご参加希望の方は,2月13日までに稲増(k-inamasu[at]kwansei.ac.jpまでご連絡下さい.


セミナーと研究交流会は,無事盛会にて終了いたしました.宋先生,ご参加下さった皆様,ありがとうございました.