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第13回KG-RCSP合同ゼミ

KG-RCSP合同ゼミは,異なる学部の複数のゼミが集い,メンバーの研究発表と外部ゲストの講演を交えた「多様性と類似性の相乗効果」の場です.毎回,ゼミメンバーの発表に加えて,興味深い研究をしておられる 「今,この人の話を是非聴きたい+学生たちに聴かせたい」と思える研究者をお招きして講演もしていただいています.聴講・議論への参加は,ゼミ内外,学部生/大学院生/職業研究者等々を問わず,どなたでも歓迎します.

第13回目となる今回は,大学院生4名が自身の研究成果や研究計画を発表するとともに,澤幸祐先生(専修大学人間科学部 教授)をお招きして行います.澤先生は大阪大学人間科学部・関西学院大学文学研究科のご出身ですので,この合同ゼミに関わる4ラボといずれもゆかりの深い方です.

【日時】2022年7月27日(水) 13:00-18:00(予定)

【場所】対面:関西学院大学西宮上ケ原キャンパス E102講義室
オンライン:Zoom(要登録)


今回の合同ゼミは対面とオンラインのハイブリッド開催とします.オンラインでの参加には事前登録が必要です.

オンライン参加に際しては,以下のURLから事前登録をお願いします.登録承認後,「第13回KG-RCSP合同ゼミ確認」というタイトルでアクセス要領が書かれた返信メールが届きます.「ここをクリックして参加」をクリックするか,ZoomにアクセスしてミーティングIDとパスワードを入力して参加してください.

ご不明な点は稲増一憲(k-inamasu@kwansei.ac.jp)にお問い合わせください.

https://us06web.zoom.us/meeting/register/tZ0pcOyoqTotHNC14ZUcy868brTz8ttcwUkr
ミーティングID:894 7507 1764


第1部:招待講演

13:00-14:30 澤 幸祐 先生(専修大学人間科学部 教授)アバター

なぜ学習心理学者がベルクソンに興味をもっているのか

これは私見だが、心理学という学問は自然科学と人文学の交差点にある。少なくともいくつかの分野の心理学は、置き換え不可能な個別の生を生きる生物の心的過程を、置き換え可能な物質に対して適用される伝統的な自然科学の作法によって扱おうとしてきた。こうした心理学の自然化のなかで、「どうすれば自然科学の作法に乗るか」についての多くの考察があり、その中には「哲学的決断」とも呼べるような過程が含まれていた。例えば心理測定は「心的状態や機能を数値化する」という作業だが、その背景には「心的状態を元とした集合がある」「元としての心的状態は(場合によっては内観を含む)反応によって分離・比較が可能である」といった、相当に強い仮定についての「哲学的決断」が含まれることがある。こうした「哲学的決断」のおかげで心理学は自然科学的方法を適用可能な場面が増えた一方で、その多くは内在化され、明示的には顧みられないことが多いように見受けられる。
アンリ・ベルクソンは、少なくとも私のような学習心理学者が内在化して前提としている多くの「哲学的決断」に対して、厳しい批判を加えているように見える。「意識に直接与えられたものについての試論」では、当時の心理学者・精神物理学者としてヴントやジェームズ、フェヒナーが取り上げられ、質的対象を量的対象であるかのように扱うことや、時間的な厚みを持ったものを切断して扱うことなどについて様々な議論が行われている。その批判は、実験心理学者からすれば「そういわれましても」という部分があることは認めつつも、ベルクソンの主張を(すべてではないにせよ)組み入れた「哲学的決断」に基づいた「ありえたかもしれない別の心理学」の可能性も感じさせる。そこで本発表では、特に連合学習を中心とした学習心理学領域において、発表者がこれまでに行ってきた研究を題材に、ベルクソン的発想との接合を試みる。

(休憩)

第2部:ゼミメンバーによる発表

14:50-15:30 小林 穂波(関西学院大学大学院文学研究科D2・日本学術振興会特別研究員DC1)

視覚情報探索の学習と最適化に関する最適採餌理論を用いた枠組みの検討

私たちは、常に何かを探索している。その中でも、視覚情報の探索は日常生活に欠かせないもので、視覚探索課題 (visual search task) を使った研究は認知心理学の重要な研究テーマであり続けてきた。最近では、視覚探索課題という限定された環境の中で探索標的を探すという課題を改変し、より日常的な意味での探索という行動の解明に寄与できるように、より現実的で複雑な実験刺激や課題状況を利用しようという機運が高まっている。しかし、刺激や課題を複雑にした場合、何の理論を検証しようとした研究であるのかが混乱しやすく、様々な課題における個々の実験結果が氾濫する事態を招きやすい。そこで、本研究は、動物が餌を探索する行動を扱った最適採餌理論を行動生態学から援用して発展させることで、視覚情報の探索を統一的に理解する枠組みの構築を試みている。本発表では、まず、採餌状況を模した視覚的採餌課題を利用して、標的刺激の特徴を学習し探索を最適化する過程について検証した研究の結果を紹介する。さらに、最適採餌理論を用いた統一的な探索研究の枠組みの構築について、現状を報告し、今後の方向性について議論を行いたい。

15:30-16:10 水野 景子(関西学院大学大学院社会学研究科D2・日本学術振興会特別研究員DC1)

社会的ジレンマ状況における罰の逆効果

皆が自分の利益のために行動すると皆が損してしまう状況は社会に多く存在し、協力しない人を罰する制度が導入されることがある。しかし、一部の研究では、罰制度を導入したあと廃止すると、むしろ罰を導入しなかった場合よりも人が協力しなくなることが報告されている。もしそれが頑健に起こるのであれば、罰の導入には慎重になるべきであろう。そこで本研究では、罰制度のある状況を経験していない統制群よりも罰を取り除いたあとの実験群の協力が下がる現象を罰の逆効果と定義し、罰の逆効果が起こるかどうかに注目した。本研究は、対象となる現象が安定して起こることを確認したのちに次の課題としてそれが起こる心理プロセスを検討するという過程の、現象が再現されるかの確認の段階に位置づけられる。昨年事前登録のうえ行った発表者らの追試研究では、罰の逆効果は再現されなかった。そこで次に、罰の大きさや罰の与え方 (いくら貢献すればよいかの基準を示す罰と最も貢献が少ない人に対する罰) を変えて実験を行う。発表では、上記2つの実験について報告するとともに、十分な参加者数を得る手段として有効なオンライン集団実験についても紹介したい。

(休憩)

16:20-17:00 中越 みずき(関西学院大学大学院社会学研究科D2・日本学術振興会特別研究員DC2)

支援に「値する」こと:Deservingnessヒューリスティックはイデオロギーを超越するか

本研究では,公的支援に関する判断に用いられるヒューリスティックとしてDeservingnessヒューリスティックに注目した。社会保障に関する判断を求められたとき ,人は困窮者の属性情報を手がかりとして利用する。これをDeservingnessヒューリスティックという。Deservingnessヒューリスティックはヒトに備わった生得的性質であり,政治的価値観を超越して機能するとされる。コンジョイント実験の結果,有権者は困窮者の「勤勉さ(怠惰さ)」や「不運さ」にまつわる属性をDeservingnessヒューリスティックとして用いやすいことがわかった。さらに,保守派とリベラル派とで手がかりとする属性に違いがあるかを検討したところ,タイムプレッシャーによる認知制限を設けた場合には,イデオロギーによる差異はみられなかった。本結果は支援に「値する(値しない)」困窮者像がイデオロギーを超越して共有されている可能性を示唆する。
(※本発表はオンラインで行われます)

17:00-17:40 山縣 芽生(大阪大学大学院人間科学研究科D3)

COVID-19流行下における忌避反応の時系列変化: 2020年1月から2021年11月の16波パネル調査に基づく検討

2020年から現在までも続くCOVID-19の世界的流行の中で,人々の心理・行動はどのように変化していったのだろうか。先行研究に基づけば,COVID-19流行の深刻化に伴って,脅威への忌避反応としての感染予防行動や外集団成員への排斥が線形的に増加することが予測される。しかし,2020年1月末から同年3月上旬までの時系列データを分析したYamagata et al.(2021)では予測とは異なる結果が得られ,2020年1月末で既に人々は緊張状態にあったことが明らかとなった。本研究では,その後の社会的状況が深刻化したことや,時系列変化をより構造的に捉えるために,Yamagata et al. (2021)のパネル調査を継続して約2年にわたる16波データでの検討を行った。主要な変数ごとに時系列推移が変化するポイントを検出した結果,第1回目の緊急事態宣言の発令直前から発令期間中(2020年3月~4月)と,感染流行第3波の直前(2020年11月)を起点に変化が見られた。本発表では,変化点前後のトレンドについて個人属性やCOVID-19の感染状況の観点から考察する。