KG-RCSPセミナー

KG-RCSPセミナーには,主に2つのテーマがあります.1つは,社会心理学およびその関連領域で先端的でユニークな研究を精力的に行っている方をお招きして,その研究の面白さを存分に語っていただくこと.もう1つは,社会心理学研究に応用可能なテクニックを実践的に学ぶ機会を持つこと.こうした機会を,特に大学院生や学部生など若い方々に積極的に提供すること(そして,主催者自身が楽しむこと)を目的としています.


第29回KG-RCSPセミナー「相互作用を通じた共有現実の創発を支える行動・認知神経基盤」(黒田起吏氏、東京大学・日本学術振興会

【日時】2023年2月9日(木) 16:00~17:30
【場所】関西学院大学社会学部 社202
【発表者】黒田起吏氏(東京大学・日本学術振興会

【概要】インターネットによって相互作用の機会が増えた結果、何が普通であるかに関する知覚や認知、ひいては規範が新たに形成されている。このように社会的に共有された現実(shared reality)は動的な相互作用から生まれるものの、多くの先行研究は、既存の規範に対して人々がどのように反応するかという受動的な場面を検討するにとどまっている。そこで本研究では行動実験・fMRI実験・オンライン実験を行い、知覚に関するshared realityが生まれる際の認知・神経メカニズムと相互作用過程を調べた。3つの実験にわたり、人々の知覚的反応が相互作用を通じて収束した。また、とくに社会的影響が双方向な場合、知覚的反応を生み出す心理物理関数が安定した。その安定度は視点取得に関する脳活動によって調整された。これらの結果は、双方向の社会的影響が相手への視点取得を促し、行動を生成する心理物理関数のレベルで人々が合意を取れるようになることを示唆している。


第28回KG-RCSPセミナーインクルーシブ教育に対する消極的態度を規定する心理・社会的要因の分析」(前田楓氏、大阪市立大学大学院都市文化研究センター・日本学術振興会・安田女子大学

【日時】2021年7月3日(土) 14:00~16:00
【場所】Zoomでのオンライン開催
【発表者】前田楓氏(大阪市立大学大学院都市文化研究センター・日本学術振興会・安田女子大学

【概要】共生社会の実現を目指す近年の動きは、まさに国際的潮流の中にあり、我が国においても障害者差別解消法の施行等、障害のある人たちの社会的包摂が着実に進められています。とりわけ学校教育の現場では、従来の分離教育ないし統合教育から「インクルーシブ教育」への転換が目指されているものの、こうした時代の趨勢に人々の認識が追い付いているとは言い難い現状も伺えます。本発表では、発表者がこれまでに実施してきた複数の調査をもとに、現代社会を生きる人たちの間ではインクルーシブ教育に対する消極的な態度が垣間見える事実を示します。そのうえで、そうした消極的な態度を規定する心理・社会的な要因についてさまざまな角度から検討を加えた四つの研究――人々の障害の捉え方(障害観)に着目した研究(研究1)、学校教員の消極的な態度を規定する要因について検討した研究(研究2・3)、さらに、マクロ・レベルでの変数を扱うデータセットを用いて、インクルーシブ教育に対する態度と文化的特性の関連性を検討した二次分析(研究4)――をご紹介します。これらの研究知見をもとに現時点で解釈できること、さらには、発表者の今後の研究案につきましても皆さま方と議論できれば幸いです。


第27回KG-RCSPセミナー/第39回政治コミュニケーション研究会「最不遇者への配慮を基軸とした分配的正義の実現可能性」(上島淳史氏・東北大学)

【日時】2021年4月26日(月) 15:00~17:00
【場所】Zoomでのオンライン開催
【発表者】上島淳史氏(日本学術振興会特別研究員PD(東北大学))

【概要】格差や貧困、公正な資源分配のあり方は世界的な関心を集める重要課題である。社会の分断に関する議論の高まりは、広く人々に配慮され、合意形成の基盤となる資源分配の原理を経験的に明らかにすることの重要を示唆している。本報告では、これまで報告者が行ってきた人々の分配判断に関する一連の実験室実験の結果を報告する。一連の実験では、不平等回避(inequality aversion)の中身を (1)「不平等そのものへの配慮」と (2)「最不遇者への配慮」の2要素に区別した検討を行った。実験の結果は、最不遇者への配慮は(不平等そのものへの配慮よりも)分配判断において中心的役割を担っていることを示していた。社会における最も恵まれない人への関心が、公正な資源分配原理について合意する際の共通基盤として機能する可能性について議論する。


第26回「計算社会科学による人間・社会のわかり方」(笹原和俊氏・名古屋大学)

【日時】2020年2月21日(金) 15:00~17:00
【場所】関西学院大学梅田キャンパス 1405室
【発表者】笹原和俊(名古屋大学大学院情報学研究科、JSTさきがけ)

【概要】計算社会科学 (Computational Social Science)という新しい学際科学が誕生し、注目されている。その背景として、ウェブのソーシャル化やIoTの登場により人間行動が電子化されるようになったことや、ビッグデータを扱う数理・情報技術が発達したことがある。さらに、複雑化社会の新しい理解の仕方が求められていることもあげられる。本セミナーでは、計算社会科学の誕生経緯、アプローチ、最新動向を紹介した後、「分断」をテーマとする研究を紹介する。まず、フェイクニュースの温床となるエコーチェンバーに関する計算モデルについてで、人間の認知特性とソーシャルメディアの相互作用から意見の分極や社会的分断が生じることを示す。次に、食およびLGBTに関するソーシャルメディア分析で、コミュニティごとに特徴的な価値観や道徳観を持つことを示す。最後に、分断を緩和し、集合知を醸成するための技術的試み(Polyphony)について紹介する。


第25回 2020/01/06「社会的ジレンマ実験プログラムの開発と実践:oTreeを用いて」(後藤晶氏・明治大学)

【日時】2020年1月6日(月) 13:00~15:00, 15:10~17:30

【場所】関西学院大学(西宮上ケ原キャンパス)社会学部棟3F 社会心理実験準備室

【発表者】後藤晶さん(明治大学)

【概要】 社会的ジレンマ状況に関する実験は社会心理学や行動経済学の注目を浴びているトピックの一つである.一方で,実験を実施するにはプログラムの作成が大きな壁となっている.従来ではz-Tree(Fischbacher, 2007)と呼ばれる経済実験プログラムを用いることが多いが,基本的にwindows端末でなければ実験ができないなどの様々な制約条件が存在している.

しかし,昨今ではPythonのwebアプリケーションフレームワークであるdjangoをベースにしたoTree(Chen, et.al, 2016)というプログラムの開発が進められている.このプログラムのメリットは広く使われている言語の一つであるPythonに基づいてプログラムを設計できる点,さらにwebブラウザ上で実験を実施できる点にある.

今回のセミナーでは主に実験プログラムの開発と実践に着目して,実際のプログラム開発およびoTreeの操作方法について紹介する.主に対象となるのは以下の方々である.①実際に実験プログラムを作ってみたい方:実際にプログラム体験を予定している.②プログラム作成まではいかなくとも,完成しているoTreeサーバの使い方を学びたい方:公開しているサーバに触れながら,その操作方法を紹介する.③広く,インタラクションのある社会的ジレンマ研究に興味のある方.

さらに,プログラム開発と実践を通じて,これからの新たな実験研究の展開可能性について議論したい.


第24回 2019/11/22「維新支持の分析」(善教将大・関西学院大学)

【日時】2019年11月22日(金) 15:30~17:30

【場所】関西学院大学(上ヶ原キャンパス)図書館ホール(関西学院大学図書館B1F)

【発表者】善教将大(関西学院大学法学部・社会心理学研究センター研究員)

【概要】2019年4月に行われた大阪市長選と大阪府知事選の結果は、維新の強さを改めて見せつけるものだった。大阪府知事だった松井一郎が大阪市長選に、大阪市長だった吉村洋文が大阪府知事選に出馬するという異例の戦略に対して、多くの識者やメディアは批判を浴びせた。しかし結果は、両選挙ともに維新の候補者が勝利するというものだった。全国的には支持率は低く、それほど選挙に強いわけでもない維新がなぜ関西圏、特に大阪では多くの有権者に支持される政党となっているのか。本報告では、まず、これまで報告者が行ってきた維新支持に関する実証研究をまとめた『維新支持の分析:ポピュリズムか、有権者の合理性か』(有斐閣、2018年・第41回サントリー学芸賞受賞)の内容を紹介しながら、維新が「大阪」の代表者として認識されていることが支持される理由として重要であることを指摘する。その上で、報告者が2019年5月に実施した意識調査の分析を通じて、自民支持層の「票割れ」などにもふれつつ、維新が支持される理由を改めて検討していく。​


第23回 2019/7/26 「夏だ!調査だ!!実験だ!!!(第36回政治コミュニケーション研究会との共催)」(小林哲郎氏・香港城市大学,稲増一憲・関西学院大学)

【発表者】小林哲郎氏(香港城市大学)
【発表言語】日本語
【タイトル】党派的な選択的接触の境界条件:文化とアイデンティティの観点から
【概要】党派的な選択的接触はアメリカを中心とする政治コミュニケーション研究では繰り返し報告されており、オンラインエコーチェンバーや政治的態度や感情の極性化の一因として考えられている。しかし、アメリカ以外の文脈では党派的な選択的接触は必ずしも強く見られていない。本報告は、文化とアイデンティティという2つの要因に注目し、党派的な選択的接触の境界条件を明らかにすることを目的とした一連の研究を紹介する。まず、擬似オンラインニュースサイトを用いてアメリカ、日本、香港で行われた比較文化研究では、アメリカでは選択的接触が強く見られるのに対して、香港では比較的弱く、日本では見られないことを示す。次に、香港における一連の研究から、香港人という単一アイデンティティを持つ人は選択的接触を示すのに対して、香港人と中国人のデュアルアイデンティティを持つ人の間では選択的接触は見られないことを示す。さらにこのアイデンティティによる差異は政治的なソーシャルメディア利用が態度と感情の極性化に及ぼす効果を調整しており、デュアルアイデンティティを持つ人はソーシャルメディアを政治コミュニケーションに利用するほど、政治的態度や感情が「非極性化」することを示す。これらの一連の研究を通して、アメリカにおける研究の強い影響を受けて「定見」となりつつある党派的な選択的接触の普遍性について議論したい。

【発表者】稲増一憲(関西学院大学)
【タイトル】自他への社会的影響の認識の差異:マスメディアの第三者効果研究の新展開を目指して
【発表言語】日本語
【概要】人間が他者に対するメディアの影響力を自身への影響力と比べて過大視するマスメディアの第三者効果の存在は、メディア・コミュニケーション研究において、たびたび確認されてきた。一方で心理学においては、このような自他への社会的影響の認識の差は、マスメディアだけでなく対人的コミュニケーション等においても見られる一般的な現象として捉えられている。しかし、いずれの分野においてもなぜこのような現象が起こるのかについて、十分や説明が行われているとは言い難い。そこで本研究は、自他への社会的影響の認識の差をもたらす要因を探るべく、複数のWeb調査によって検証を行った。まず、有力な説のひとつとされてきた自己奉仕バイアスに基づく説明については、自尊心や自己愛と自他への社会的影響の認識の差に相関が見られず、社会的に望ましい情報について自己への影響力を過大視する第一者効果も再現されなかったことから、少なくとも日本においては成り立たない可能性が示唆された。また、政治的意見についての家族・学校教育・他者との会話・インターネット、およびマスメディアについての自他への影響力の差の認識を測定したところ、マスメディアの影響力の差の認識のみが他の情報源より大きかった。これらの結果は、一般的な自他への影響力の認識の差とマスメディアの第三者効果特有の部分を弁別した上で、それぞれをもたらす要因についてさらなる検証を行う必要性を示している。

 


第22回 2019/2/20 「Qualtrics+Rによるコンジョイント分析」(宋 財泫氏・早稲田大学)

【日時】2019年2月20日(水)13:00~17:30

【場所】関西学院大学西宮上ケ原キャンパス社会学部202号教室

【発表者】宋 財泫 (ソン ジェヒョン)氏(早稲田大学高等研究所)

【タイトル】 Qualtrics+Rによるコンジョイント分析

【概要】 近年、社会科学においてコンジョイント分析(Conjoint analysis)が広まりつつある。マーケティングなどの一部の分野で使われてきたコンジョイント分析だが、数個の選択肢から一つを選ぶ行為は、マーケティングだけでなく、社会科学全般との親和性が高い。また、調査観察データに基づく研究で指摘されてきた「社会的望ましさバイアス(Social Desirability Bias; SDB)」を最小化しながら仮説検定ができる点は、コンジョイント分析の強みである。本セミナーではコンジョイント分析について簡単に紹介し、Qualtricsを用いたコンジョイント実験の実施とRによる分析の実行と解釈について解説する。


第21回 2018/11/9 「ビッグデータと社会・文化心理学」(浜村武氏・Curtin University)

【日時】2018年11月9日(金) 15:30~17:00

【場所】関西学院大学西宮上ケ原キャンパスF102教室

【発表者】Dr. Takeshi Hamamura(浜村武)氏(Curtin University, Perth, Australia)

【タイトル】ビッグデータと社会・文化心理学

【概要】ビッグデータの分析は、膨大なデータを駆使することで既存の研究活動を活発化させ、さらには従来の社会科学の研究手法では難しかった研究課題を可能としうる。ビッグデータ分析そしてデータサイエンスの発展は、社会・文化心理学の研究にどのような効用をもたらすのであろうか。このプレゼンテーションではまずビッグデータを用いた社会・文化心理学の代表的な研究事例をレビュー。そして文化心理学の中でも特に文化の変遷の研究におけるビッグデータの分析の効用について、我々が行なっている研究を例として詳しく考察する。具体的にはビッグデータを用い集団間関係の変遷(研究1)そしてanxietyの長期的な変遷(研究2)を分析する試みをご紹介する。


第20回 2018/7/26 「サッカーとナショナリズム」(小林哲郎氏・香港城市大学)

【日時】2018年7月26日(木) 16:00~17:30

【場所】関西学院大学西宮上ケ原キャンパスF号館103教室

【発表者】小林哲郎 氏(香港城市大学)

【タイトル】サッカーとナショナリズム

【概要】スポーツの国際試合はナショナリズムや愛国主義を少なくとも短期的に高める要因となりうる。特に、観客や選手によって政治的なアピールが行われる場合には、国家間や民族間の対立的感情が煽られる危険性もある。本発表は、日本人の成人を対象に2015年に実施された、サッカーの国際試合における勝ち負け、相手の強さ(格上vs.格下)、政治的文脈の有無のそれぞれを操作したサーベイ実験の結果を紹介する。従属変数はナショナリズム、愛国主義、ナショナルプライドである。分析の結果、サッカーの国際試合はナショナリズムの先行要因になり得るが、その効果は相手国や勝ち負けに依存することが示唆された。※本研究は、Christian Colletさん(国際基督教大学)との共同研究です。


第19回 2018/5/26 「放射能リスクへの態度は変わったのか」(池田功毅氏・中京大学,中西大輔氏・広島修道大学)

【日時】2018年5月26日(土) 14:30~17:30

【場所】関西学院大学大阪梅田キャンパス1105教室

【発表者】池田功毅氏(中京大学)・中西大輔氏(広島修道大学)

【タイトル】放射能リスクへの態度は変わったのか

【概要】福島第一原発事故から7年。「放射能」や「福島」への日本人の態度にはどのような変化があった、または無かったのだろうか。私たちの研究チームで進めてきた二つの研究から見えてきた状況を報告します。

■リスクへの態度にネットワーク分析を応用してみる 発表者: 池田功毅(中京大学)

性格や態度など、従来であれば因子分析等の潜在変数を用いて分析が行われてきた対象に対して、近年、ネットワーク分析を応用する研究が出てきた(e.g. Epskamp et al. 2016)。本発表では、こうした性格・社会心理学におけるネットワーク分析の導入状況と、その利点・問題点などについて概略し、ひとつの応用例として、放射能を含む各種のリスクに対して、2014年から3回に渡って縦断的に測定された、態度をはじめとする様々な質問項目を対象とした分析を紹介する。

■買い控えと科学リテラシー 発表者: 中西大輔 (広島修道大学)

本研究では、福島県産品の買い控えに科学リテラシーが与える影響を検討する。震災時には様々なデマが広がり、消費者のメディア・リテラシーが問われた。また、食品に関するリスク・リテラシーは人々の購買行動に影響すると思われる。しかし一方で、科学リテラシーが高ければ買い控えをしないのかどうかは自明ではない。「賢い」消費者がイメージに左右される例は枚挙にいとまがないし、情報を精査することがかえって買い控えを誘発する可能性もある。本報告では態度としてのリテラシーと知識としてのリテラシーを区別し、それらが買い控え行動にいかなる影響を与えるのかをについてこれまで行った3つの調査結果を報告する。


第18回 2018/1/19 「協力の進化:行動科学者は、この学際的な研究に何を貢献しうるのか」(竹澤正哲氏・北海道大学大学院)

【日時】2018年1月19日(金)15:10~18:20

【場所】関西学院大学西宮上ケ原キャンパス 図書館ホール(関西学院大学図書館B1F)

【発表者】竹澤正哲 氏(北海道大学大学院文学研究科・北海道大学社会科学実験研究センター)

【タイトル】協力の進化:行動科学者は、この学際的な研究に何を貢献しうるのか

【概要】協力の進化と呼ばれる研究は、自然科学と社会科学、数理モデルと実証研究が互いに影響を与えながら発展してきた。21世紀に入ると、群淘汰、遺伝子と文化の共進化といった、生物学に出自を持つ概念を使って人間の協力を説明しようとする動きが加速する。だがこの動きは、偏狭な利他主義を巡る論争に代表されるように、研究者の間に様々な誤解や混乱をもたらしている。本発表ではまず、協力の進化を巡る近年の理論研究を整理した上で、「人間は偏狭な利他主義者であるはずだ」とか「人間は集団間での争いに勝ち抜くために協力的な性向を獲得したのだ」といった類の主張が、理論モデルから必然的に導かれるわけではないことを指摘する。続いて、協力の進化における理論研究から、心理学者が汲み取るべき最も重要なメッセージとは、人口動態や集団構造の重要性であることを指摘する。そして、心理学者が行うような行動実験が、この研究テーマに対してどのように貢献しうるのか、具体例を通して議論する。【抱負】質疑応答込みで3時間のトークという稀有な機会を頂いた。そこで、「協力の進化」という大きな問いを巡る理論研究の現状を、専門家でない心理学者にも理解してもらえるように紹介した上で、心理学者がこの学際的な研究領域に対してどのように貢献していくことができるのか、聴衆とともに議論したい。


第17回 2017/11/8 「人と物のパーソナルスペース」(有賀敦紀氏・広島大学大学院)

【日時】2017年11月8日(水) 13:30~15:00

【場所】関西学院大学西宮上ケ原キャンパスF103教室

【発表者】有賀敦紀氏(広島大学大学院総合科学研究科・准教授)

【タイトル】人と物のパーソナルスペース

【要旨】人間には他者にこれ以上近づかれると何となく落ち着かない距離がある(パーソナルスペース:PS)。このPSは個人の身体を取り巻く目で見ることのできない空間領域であり,その特性に関して様々な社会心理学的研究が行われてきた。本発表では人と物のPSに関する研究をそれぞれ紹介し,PSの事前予測と実際の行動のずれについて議論したい。


第16回 2017/10/30 「オンラインでの知覚実験の刺激制御法」(細川研知氏・NTTコミュニケーション科学基礎研究所)

【日時】10月30日(月) 13:30~(2時間程度)

【場所】関西学院大学西宮上ケ原キャンパスF310教室

【講師】細川研知氏(NTTコミュニケーション科学基礎研究所人間情報研究部リサーチアソシエイト)
【題目】オンラインでの知覚実験の刺激制御法

【概要】視覚や聴覚など知覚の心理物理学的測定には刺激の厳密な統制が必要になるため、これらの実験は多くの場合暗室や防音室の中で行われ、必要に応じて特殊な機材やプログラムを用いる。知覚実験をオンラインで行う場合、環境や機材を整えることは難しく、セキュリティ上の観点からプログラムの配布にも制限がある。本講演では、筆者の開発したツールを題材として現在標準化されている技術で可能なオンライン知覚実験の範囲について概説する。また、最近の知覚のオンライン実験の動向を紹介し、オンライン化による知覚心理学の発展の方向性について論じるほか、知覚実験に伴う倫理的問題、プライバシーの問題についても議論する。

参考資料(当日資料ではありませんが,目を通しておくとよいと思われるものたちです)
Webリソース:
jspsych公式ページ http://www.jspsych.org
jspsych日本語解説サイト https://sites.google.com/site/webdeshinri/
ScriptingRT https://reactiontimes.wordpress.com/scriptingrt/
PsychoPy http://www.psychopy.org
TestMyBrain https://testmybrain.org

論文:
佐々木恭志郎・山田祐樹 (2016) クラウドソーシングによる知覚研究: コントラスト感度測定の場合 (コンシューマエレクトロニクス ヒューマンインフォメーション). 映像情報メディア学会技術報告= ITE technical report, 40(46), 53-56.


第15回 2017/7/7 「東アジアではなぜデモ参加者が嫌われるのか?」(小林哲郎氏・香港城市大学・センター客員研究員)

【日時】2017年7月7日(金) 15:30~17:30

【場所】関西学院大学西宮上ケ原キャンパスF201教室

【発表者】小林哲郎氏(香港城市大学・関西学院大学社会心理学研究センター客員研究員)

【タイトル】東アジアではなぜデモ参加者が嫌われるのか?

【要旨】民主主義体制下においてデモなどの投票外政治参加は政治過程に対する重要なインプットとなる。しかし、日本における政治参加は国際的に見ても低調である。本研究は日本、アメリカ、中国、香港の4か国で行われたヴィニエット型のオンライン実験の結果から日本や中国など東アジアでは政治的にアクティブな人々が忌避される傾向が見られること、こうした傾向は政治的にアクティブな人々との政治的不同意によっても部分的に説明されるが、むしろそうした人々が「傲慢で自分勝手で感情的で怒りっぽい危険な人々」であるという印象によってもたらされている可能性を指摘する。政治学における政治参加研究はその促進要因を明らかにしてきたが、本研究は特に東アジアでは政治参加者の対人印象がその重要な抑制要因として働く可能性を示唆している。(この研究は,三浦麻子(関西学院大学)・曹博林(深セン大学)との共同研究です)


第14回 2017/3/31 「政治的態度の母集団分布を推定する」(清水裕士・稲増一憲・センター研究員)

【日時】2017年3月31日(金) 15:30~17:30

【場所】関西学院大学梅田キャンパス 1408(上ヶ原キャンパスではありません)

会場案内図:http://www.kwansei.ac.jp/kg_hub/access/index.html

【発表者】清水裕士さん・稲増一憲さん(関西学院大学)

【タイトル】政治的態度の母集団分布を推定する

【概要】本研究は、政治的態度の母集団分布を推定するモデルの提案を目的とする。これまで政治的イデオロギーの保守‐革新次元は単項目(10段階程度)で測定されることが多かった。しかし、態度測定理論によればリッカート式単項目による測定は、信頼性の評価ができないだけでなく、その測定や分布推定が妥当であるためには回答行動にさまざまな暗黙の仮定を必要とする。そこで本研究では3つの解決法により、より正確な政治的態度の母集団分布の推定を試みた。それは、1.いくつかの政治的争点に対する意見からイデオロギーを展開型項目反応理論で推定する、2.機械学習の手法を援用することで態度得点の事前分布をデータから自動的に学習する、つまり政治的態度の母集団分布の確率密度関数を推定する、3.アンカリングヴィネット(係留寸描)法によって調査対象者の回答傾向を推定・補正し、より純度の高い態度の推定を行う、というものであった。分析の結果、政治的態度はこれまで項目反応理論や因子分析が暗に仮定していた正規分布から大きく逸脱した分布に従っていることが示された。また、母集団分布を知ることから、政治的態度の生成メカニズムを推論する可能性について議論を行う。


第13回 2017/3/10 「認知心理学の周辺事態」(山田祐樹氏・九州大学基幹教育院)

【日時】2017年3月10日(金) 11:10~12:40

【場所】関西学院大学西宮上ケ原キャンパスF104教室

【発表者】山田祐樹氏(九州大学基幹教育院)

【タイトル】認知心理学の周辺事態

【概要】どんな学問であれ,各研究者がそれぞれ独自に面白いと思うことを研究しているものである。一方で,その研究トピック選択には明らかな偏りも生じている。講演者は特に認知心理学における隙間市場をスヌーピングすることを好んできたのでそうした研究の紹介を行う。またさらに,研究トピックの偏好バイアスは研究結果の再現可能性問題やサイエンスコミュニケーションとも関連することを指摘する。これらのことを踏まえながら心理学の未来について参加者と議論したい。


第12回 2017/2/11 「企業コミュニケーションの現状と、ソーシャル時代の共感のつくり方」(山本隆博氏・シャープエレクトロニクスマーケティング株式会社・シャープ公式ツイッター @SHARP_JP 運営者)

【日時】2017年2月11日(土)14:00~17:00

【場所】関西学院大学 大阪梅田キャンパス 14階 1405教室

【発表者】山本隆博(シャープエレクトロニクスマーケティング株式会社・シャープ公式ツイッター @SHARP_JP 運営者)

【ファシリテイター】三浦麻子(関西学院大学文学部)

【前説】今回はいつものKSPとはやや趣向を変えて,企業のSNS広報の最前線にいらっしゃる山本さんから話題提供をいただき,三浦が議論のファシリテイターを務めさせていただきます.山本さんは,シャープ公式ツイッターアカウント@SHARP_JP 1) の運営にほぼお一人で関与して来られ,34万人近いフォロワーを獲得しています.山本さんと三浦は,毎日新聞の取材記事 2) に三浦がコメントを寄せたことがきっかけでツイッター上でつながり 3),交流が始まりました.直接お目にかかった折に,日々どんなことを考えながら公式アカウントとしてのツイートを投稿しておられるかをあれこれと伺い,それらが優れて社会心理学的であることと,個人的には日本社会心理学会広報委員会アカウントを長年運用する中で獲得したSNSへの「広報媒体としての接し方」の肌感覚とぴったり一致したことが強く印象に残り,是非KSPでご講演いただこうと思い立ちました.当日は,ツイッターのようなSNSコミュニケーションにおける炎上と共感の拡散という,一見正反対の,しかし「強い感情の共有」であることは通底した現象について,企業広報という切り口から,山本さんからご紹介いただく事例に三浦が適宜合いの手と混ぜっ返しを入れつつ,フロアの皆様と社会心理学的な考察を深めることができればと考えています.

Refs:

1) https://twitter.com/sharp_jp

2) http://mainichi.jp/articles/20160610/k00/00e/040/207000c

3) https://twitter.com/asarin/status/741230176525127682

【発表題目】企業コミュニケーションの現状と、ソーシャル時代の共感のつくり方

【発表概要】ツイッターやフェイスブックなど、企業がソーシャルアカウントを持ち、自ら情報を発信することはいまや珍しいことでなくなりました。一方で、企業のソーシャルアカウントの発言、もしくは所属する個人の発言をきっかけに、社会的な注目を浴びるケースも後を絶ちません。いわゆる炎上と呼ばれる現象です。ソーシャルメディアの普及によって、個人同士だけでなく、企業とユーザーが直接コミュニケーションが可能になったこと。それは企業のマーケティング行為においても画期的なことでした。と同時に企業は、ユーザーの声やネットという世間に直接対峙せざるをえなくなったという環境に放り込まれ、いまだ手探りが続けているのかもしれません。また別の観点から。広告がメディアとしても、マーケティングツールとしても、もはや曲がり角であることが指摘され続けています。テレビ離れとCMが視聴されないこと、紙媒体の終焉、スマホによる情報受容の劇的な変化、一方ネットではキュレーションサイト問題をきっかけに、ウェブメディア自体の信頼性が問われ、そもそもスマホネイティブには、広告そのものが嫌悪される傾向が顕著です。そのような中、企業はいかに広告するか、いかに広告から離れるか、情報をユーザーへ届ける方法そのものに課題を抱えています。そのような状況の中、電機メーカーのシャープはソーシャルメディア、おもにツイッターにおいて独特の存在感を発揮しています。まるで友だちのようなコミュニケーションスタイルと、企業と個人を行き来するようなふるまいで、多くのフォロワーを広告に頼ることなく、有機的に獲得してきました。そして衆知の通り、その過程には、会社の経営危機と買収という、企業ブランドにとっては一般に逆風とされる紆余曲折の中、ユーザーから共感を獲得してきたという特異な背景もあります。今回の発表では、5年にわたるシャープのツイッターアカウントのさまざまな実例と、そこから得た知見や仮説、またネットにむきあう際の企業のふるまい方を、とかく注目されがちな炎上的ネガティブ面と、共感装置としてのポジティブ面などを概観しつつ、ていねいにお話しできればと考えています。

【発表者のプロフィール】

山本隆博 シャープエレクトロニクスマーケティング株式会社 総合プロモーション部

フォロワー数33万を越える、シャープ公式ツイッター @SHARP_JP の中の人(運営者)。長らくシャープの宣伝部門にて、アクオスなどのTVCMをはじめ、マス広告の制作を担当後、流れ流れてSNSアカウントの運営をスタート。手探りではじめたものの、時にゆるいと称されるツイートで、ニュースやまとめ記事になることが日常となる。現在もwebプロモーションの企画やユーザーとのファンベース施策と並行し、ネット上でユーザーとの交流を続けている。2014年大阪コピーライターズクラブ最高新人賞。突破クリエイティブアワード2015 審査員特別賞。中の人擬人化マンガ「シャープさんとタニタくん」コミックス2巻もまもなく発売されます。


第11回 2016/8/8 「日韓IATの試み:二国間比較実験から」(小林哲郎氏・香港城市大学)

【日時】2016年8月8日(月) 15時30分~17時30分

【場所】関西学院大学西宮上ケ原キャンパス F号館103教室

【発表者】小林哲郎さん(香港城市大学)

【概要】近年、IAT(潜在連合テスト)は心理学のみならず政治学にも応用が進んでいる。本報告では、日韓両国で行われたオンライン版日本―韓国Brief Implicit Association Test(BIAT)のデータを元に、ナショナリズムや領土問題に関する態度との関連からその有効性について議論する。


第10回 2016/7/1 「Mobile Log Data And Personal Networks: A Multi-Method Approach」(Dr. Jeffrey Boase ・University of Toronto・関西学院大学社会学部招聘教員)

【日時】2016年7月1日(金) 16:00~18:00(予定)

【場所】関西学院大学(西宮上ヶ原キャンパス) 社会学部202教室

【発表者】Dr. Jeffrey Boase (University of Toronto, 関西学院大学社会学部招聘教員)

Dr. Jeffrey Boase is an Associate Professor in the Institute of Communication, Culture, Information and Technology and the Faculty of Information at the University of Toronto.

His research focuses on the relationship between communication technology and personal networks. He is particularly interested in how emerging technologies such as smartphones and social media platforms may enable or hinder the transfer of information and support within personal networks. In recent years he has incorporated digital trace data into his project designs.

【概要】Research regarding personal networks has typically relied on self-report measures, which have known validity issues and are limited in scope. This talk will discuss a new approach to combining behavioral measures collected from mobile calling and texting logs, with traditional survey and interview measures. This approach involves a system in which an online portal is used to customize the actions of a smartphone based data collection application. I will also discuss ways of collecting mobile log data without compromising respondent privacy, and touch on ways of analyzing the large and complex data that this multi-method approach produces.

 


第9回 2016/6/17 「みえない心を感じ取る心 -ロボットを用いた認知科学的アプローチ-」(高橋英之氏・大阪大学大学院)

【日時】2016年6月17日(金) 15:10~17:10(予定)

【場所】関西学院大学(西宮上ヶ原キャンパス) F号館 303教室

【発表者】高橋英之さん(大阪大学大学院 基礎工学研究科)

【概要】他者の心を感じ取り,それに配慮した行動をとることは社会生活を送る上で必要不可欠な能力だと考えられている.その一方で,みえない他者の心というものを客観的に計測することは不可能であり,我々の脳は様々な情報を統合することで他者の心を想像しながら社会的な反応を生成する.すなわち他者に感じる心というものはすべて脳が作り出した幻想と言える.このような他者の心の幻想性はしばしば存在しない心の知覚を引き起こす.本発表では心の幻想性を示すロボットを用いた実験事例をいくつか紹介し,さらにその議論の延長として,みえない心を感じることが我々の社会をどのよう豊かにするのか,宗教やモラル,幸福感や愛などのテーマと絡めてみなさまと議論を行いたい.


第8回 2016/5/27 「若年層における候補者選択の基準:候補者の「見た目」と「政策」に注目したサーベイ実験より」(秦正樹氏・関西大学)

【日時】2016年5月27日(金) 16:00?18:00

【場所】関西学院大学(西宮上ヶ原キャンパス) 社会学部棟 202教室

【発表者】秦正樹さん(関西大学)

【概要】本研究の目的は,とりわけ10代後半の“新しく”有権者となる若者に着目し,若者は自身の選好を反映する候補者を正確に選択できるのかとの問いを明らかにすることにある.周知の通り,今年7月の参議院選挙より,選挙権年齢が18歳に引き下げられる.この点について社会では,10代はまだ有権者として未熟であるといった否定的な意見と,十分に政治的判断が可能とのポジティブな意見とが混在している.少なくとも,日本の10代の若者の政治的スキルの程度について,実証的に明らかになっているとは言い難い.そこで本研究では,全国16~29歳の若者を対象に実施したランダム化サーベイ実験を通じて,先述の点の解明を試みた.本実験では,(1) 10代は「返済不要の奨学金制度の創設」,20代は「若者向けの所得税減税」といった年齢集団ごとに異なる利益を主張する候補者を正確に選択できるのか,(2) 当該政策を主張する候補者の「見た目」が若年か年長か,との2点に注目した情報を与えた.実験結果より,10代・20代ともに,ライフサイクルに沿った利益を正確に選択可能であるとの結果が示された.ただし,その主張をする候補者のルックスが「年長」であった場合,10代においてのみ,自身の選好と合致しない候補者を選択してしまう傾向もみられた.


第7回 2016/3/23 「社会性の炙り出し方:ミニマリストアプローチとインクルーシブアプローチ」(渡邉克巳氏・早稲田大学)

【日時】2016年3月23日(水) 15時~17時

【場所】関西学院大学西宮上ケ原キャンパス F号館104教室

【発表者】渡邊克巳さん(早稲田大学基幹理工学部・教授)

【概要】社会性を媒介する情報は、個体間で創発され、認知や行動、体験を変化させている。このような社会的情報は、どのようなものであれ個体の表層に表現され伝わらなければならない。本講演では、社会性を媒介する情報に対して実験心理学的なミニマリストアプローチを取っている研究と実社会での具体的な実証フィールドを想定したインクルーシブアプローチを取っている研究の両方の例をいくつか紹介して議論したい。


第6回 2016/2/25 「統計への苦手意識をなくす教育:フリーソフトHADを利用した教授法の習得」(清水裕士・センター研究員)

【日時】2016年2月25日(木) 10時~17時

【場所】関西学院大学西宮上ケ原キャンパスF号館204教室

【講師】清水裕士(関西学院大学社会学部)

【概要】自然科学・社会科学・人文科学,科学と名のつくあらゆる学問において,データを収集すること,そしてそれを的確に分析することは必須の行為であり,その際は統計学を駆使する必要がある.また現代にあってはPCを利用してそれを行うケースがほとんどである.しかし,特に社会科学や人文科学といったいわゆる「文系」の科学においては,統計学(およびその前提としての数学)に苦手意識を持つもの,あるいはPCリテラシーが必ずしも高くないものが,学生はもちろん,講ずる側においても少なからず存在している.こうした苦手意識やリテラシーの低さが教授(学生にとっては学習)の不必要に高い障壁とならないようにするための1つの方法が,容易に操作が習得可能であると同時に,基礎から高度な応用まで多様なデータ分析が可能な統計ソフトウェアの利用である.こうした点に特化して,様々な工夫が凝らされた統計フリーソフトウェア(Excelマクロ)がHAD(http://norimune.net/had)である.本セミナーの目標は,現時点でまったくHADを利用したことがない受講者を,セミナー終了時には,新年度からは自分自身がHADを用いて統計分析を教授できる程度にスキルアップさせることである.そのために,HADの開発者である清水氏自らが講師を担当し,また既にHADを利用した授業実践を行っている大学教員がアシスタントを務める.


第5回 2016/2/23 「現代社会の課題としての「政治」:エンパワーと共生のはざまで」(鈴木謙介氏・本学社会学部)

【日時】2016年2月23日(火) 15:30~17:30

【場所】関西学院大学(西宮上ヶ原キャンパス) 社会学部棟 202教室

【発表者】鈴木謙介さん(関西学院大学)

【概要】政治を対象にした研究のアプローチは広いが、報告者はこれまで政治と社会学の境界領域として、政治思想の研究を進めてきた。この分野では過去20年ほど、「再帰的近代化論」と呼ばれる社会学理論を援用しながら、現代に特有の課題を理解し、政治の役割を明らかにする試みが続けられている。今回の報告では、再帰的近代化論の基本的な枠組みを紹介しつつ、なぜ「政治」が現代において課題となるのかについて問題提起を行う。この種の問題提起はどちらかと言えば思索的で、「仮説→検証」型の社会科学的手続きにはなじまないとする見方も根強い。また兆候的な事例が観察されるのみで計量的な調査で把握することが困難だとも考えられてきた。今回はこの点についても、現在までの研究動向を紹介したい。


第4回 2016/2/9 「インターネットの使用と在日コリアンに対するレイシズムについて」(高史明氏・神奈川大学非常勤講師)

【日時】2016年2月9日(木) 15時~17時

【場所】関西学院大学西宮上ケ原キャンパス 社会学部棟 301号室

【発表者】高史明(神奈川大学非常勤講師)

【概要】講演者の著書『レイシズムを解剖する 在日コリアンへの偏見とインターネット』に載録された研究及び未公刊の研究をもとに、インターネットにおけるレイシズム(人種・民族偏見)の表出やインターネットの使用量とレイシズムの関係についての知見を紹介する。あわせて、現代日本における在日コリアンに対するレイシズムを分析するためのフレームワークを紹介する。詳説する研究は、(1)Twitter上での投稿の計量 分析、(2)大学生を対象とした質問紙調査、(3)成人サンプルを用いたオンライン調査、からなる。最後に、今後の研究の展望や、目下の社会情勢において社会心理学者が何をできるかについての見解を お話する。


第3回 2015/9/12 「社会心理学における社会規範・道徳について考える」(清水裕士・センター研究員)

【日時】2015年9月12日(土)14:30~17:30

【場所】関西学院大学大阪梅田キャンパス 10階 1005教室

【概要】社会秩序はいかにして可能か,という問いは社会科学における大きな問題の1つである。社会心理学でも集団規範の古典的な研究に始まり,社会規範や道徳の起源といったテーマは近年でも注目を集めている。本発表では,社会心理学において規範というテーマがどのように研究されてきて,何が分かって,何が分かってないのかについて整理を行う。その中で,ゲーム理論の均衡概念による規範の理解が,社会心理学において議論されてきた規範概念と(部分的に)一致しないことを指摘する。その上で,規範を社会心理学的に,ゲーム理論的にどのように研究することが可能かについて,1つの理論的な提案を行う予定である。


第2回 2015/7/11 「Webサイト作成支援講習会」(前田和寛氏・比治山大学)

【日時】2015年7月11日(土)11:00~17:00(終了時間は予定です)

【場所】関西学院大学社会学部203号教室(PC教室)

【講師】前田和寛さん(比治山大学 http://kz-md.net,@kazutan on Twitter)

第2回セミナーでは,院生や若手研究者を対象とした「Webサイト作成支援講習会」を実施します。近年の若手研究者や院生は,就職活動および科研費獲得・学振研究員などの競争状況において,Web上での顕現性を高める必要性が求められています。しかし,そのノウハウはあまり共有されていません。そこで,若手研究者や院生が自らのWebサイトを作成し,Web上で研究活動の顕現性を高めるためのサポートを行います。具体的には,講師とともにレンタルサーバー(さくらインターネット)を借りて独自ドメインを取得し,WordPressでそれぞれの研究活動を記録するためのWebサイトを作成します。講師には,WebツールやPCにも詳しい比治山大学の前田和寛さんにお越しいただきます。是非,多くの若手の方に参加していただければと存じます。よろしくお願いいたします。

【スケジュール】

11:00 講習会の導入(清水)

11:10 午前の部 開始(前田)

Webサイトの作成導入~独自ドメイン取得

12:30 昼休み

13:30 午後の部 開始(前田)

WordPressの導入~各自Webサイト作成

適宜休憩

16:30 質疑応答


第1回 2015/6/12 「道徳とイデオロギーを進化と遺伝から考えてみる」(平石界氏・慶應義塾大学)

【日時】2015年6月12日(金)13:30~15:30(終了時間は予定です)

【場所】関西学院大学上ケ原キャンパス F号館103号室

【発表者】平石界さん(慶應義塾大学文学部 kaihiraishi@gmail.com,@kaihiraishi on Twitter)

【概要】人間もまた、他の生命同様、自然淘汰による進化の産物であるという前提を受け入れるのであれば、人間活動の一側面である「道徳」や「イデオロギー」といったものにもまた、自然淘汰の影響(またはその痕跡)を求めることができるだろう。しかし、こうしたアプローチは「進化」「適応」「遺伝」といった概念の(ややもすれば)安易な適用につながる面があり、他方で、「自分はハードコア進化論者じゃないから…」という遠慮が、自由で活発な議論を妨げてしまっている面もある。本報告では、報告者の行った双生児を対象とした公共財ゲーム実験研究(Hiraishi et al.,2015)を題材に、進化、遺伝、適応、個人差、利他性といった概念について、まず整理を行う。その上で、これらの概念を用いて「イデオロギーの対立」という問題を分解する試みをしてみたい。特に後半部分については、固いアイディアを示すものではなく、むしろ参加者との議論の中から、新しいアイディアを探るようなものとなることを期待している。

Hiraishi, K., Shikishima, C., Yamagata, S., and Ando, J. (2015). Heritability of decisions and outcomes of public goods games. Frontiers in Psychology, 22 April 2015 | doi: 10.3389/fpsyg.2015.00373