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第8回KG-RCSP合同ゼミ

KG-RCSP合同ゼミは,異なる大学・学部の複数のゼミが集い,メンバーの研究発表と外部ゲストの講演を交えた「多様性と類似性の相乗効果」の場です.毎回,ゼミメンバーの発表に加えて,興味深い研究をしておられる 「今,この人の話を是非聴きたい+学生たちに聴かせたい」と思える研究者をお招きして講演もしていただいています.聴講・議論への参加は,ゼミ内外,学部生/大学院生/職業研究者等々を問わず,どなたでも歓迎します.

第8回目となる今回は,関学・阪大の5名の学生が自身の研究成果や研究計画を発表するとともに,招待講演は名古屋大学情報学研究科の片平健太郎先生をお招きして行います.


新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、片平健太郎先生をお招きして、広く公開された形で合同ゼミを行うことについては中止としたいと思います。なお、片平先生のご講演につきましては、状況が改善し次第、KG-RCSPセミナーとして行っていただく予定となっております。その際には改めてアナウンスいたしますので、ぜひご参加ください。ただし、ゼミ関係者以外の方はご一報いただければ幸いです。

会場は、参加予定人数が十分距離をとって着席できる広さです。また、消毒用アルコールを設置します。マスクもいくつか準備しますが、着用される方はご自身での持参にご協力ください。また,高熱やひどい咳があるなど体調不良の方は、無理な参加はお控えいただければ幸いです。


【日時】2020年3月6日(金) 13:00-17:30

【場所】関西学院大学西宮上ケ原キャンパス 社会学部202教室

第1部:ゼミメンバーによる発表

13:05-13:35 水野景子(社会学研究科博士前期課程1年)

繰り返し社会的ジレンマゲームの意思決定モデルの探索―統計モデリングによるアプローチ―

繰り返しのある社会的ジレンマゲーム(公共財ゲーム)ではゲームを繰り返すにつれ、協力率が下がることが示されてきた。本研究では、他者が協力するかどうかの期待がゲームを繰り返すにつれて更新され、それが自身の持つ平等性(不平等忌避傾向)との交互作用によって協力に影響を及ぼす意思決定モデルを仮定から導出した。社会性を持たないエージェントを仮定した強化学習モデルをベンチマークモデルとしてモデル比較を行った結果、導出したモデルのほうが社会的ジレンマゲームの行動データをよく説明することが示された。
繰り返しのある社会的ジレンマゲームにおける意思決定モデルを仮定から導出し、構築した本研究の知見は、人の協力行動のメカニズムを検討する基礎研究として位置づけられると考えられる。当日は、実験ゲーム研究において仮定からモデルを導出し、データで検証することの意義について議論したい。また、本研究の知見が今後どのような研究に繋がるかについて意見を頂けると幸いである。

13:35-14:05 柏原宗一郎(社会学部4年)

排外主義の規定要因としてのZero-Sum Belief

日本において、旅行者だけではなく労働者についても外国人は増加傾向にある。しかし、ヘイトスピーチなど外国人に対する否定的な態度が社会的に問題になっている。Esses et al(1998)では「誰かが得れば他の誰かが失う」というZero-Sum Beliefが移民への否定的な態度を予測したとしているが、純粋なZero-Sum Beliefなのか外国人一般に対する態度なのかについての弁別が行われていない。本研究では、より一般的なZero-Sum Belief尺度を用い日本においても排外主義的態度を予測するか検討した。研究1では大学生を対象に実験を行い、外国人IATや外国人増加への態度を統制した上でも、一般的な信念としてのZero-Sum Beliefが効果を持っていた。研究2では一般人を対象にWeb調査を行い、他の排外主義尺度も用いて検討し、外国人増加への態度を統制した上でも効果を持っていた。更に、Zero-Sum Belief尺度についての検討を行い、資源の有限性、二分法的思考法、個人的相対的剥奪といた構成要素に分解されることが示された。

14:05-14:35 小林穂波(文学研究科博士前期課程1年)

学習と経験が視覚的注意の誘導を促進するメカニズムの解明

身の回りの膨大な視覚情報を処理するためには、そのときの目的や課題に応じて情報を取捨選択する必要があります。私の研究では、このような視覚的注意による選択を容易にするために関与しているさまざまな要因のうち、記憶・学習・習慣といった過去の経験による注意誘導に注目して、視覚情報処理における選択機能の解明を目指しています。特に視覚情報の空間的な関係性や確率的情報による情報処理の効率化に関する研究をこれまで行ってきました。今後は視覚的注意研究において一般的な反応時間指標に加えて、眼球運動指標を用いた実験を行い、さらに認知モデリングを活用することで、学習および習慣が注意処理の効率性に及ぼす影響を検証します。本発表ではこれまでの研究成果に基づき、今後の研究計画についてお話しします。

(14:35-14:50 休憩)

14:50-15:20 中越みずき(社会学研究科博士前期課程1年)

困窮層における保守主義の心的基盤の解明

日本において,なぜこれほどまでに保守政権が支持され続けるのかは大きなパズルであり続けている。システム正当化理論では「なぜ困窮している人々が,時として政治的・経済的保守主義を示すのか」という問題に取り組んできた。ただし,従来の研究は,経済を巡って左派と右派の明確な対立が存在する国で検討されており,経済意見がイデオロギー対立となり得ていない日本においても当該理論によるアプローチが可能かは不明であった。

そこで,報告者はまず,日本の有権者を対象としたweb調査によって,他国の先行研究と同様に,格差を是認する傾向である経済的システム正当化 (ESJ) が保守イデオロギーを媒介して保守政権支持を予測することを示し,日本の有権者にも当該理論を適用しうることを確認した。次に,低収入層におけるESJの役割を明らかにするため,第25回参議院議員選挙の直後に調査を行った。その結果,一定程度にESJが高じると,高所得者よりも低所得者の方が保守政党へ投票する確率が高くなることが示唆された。

本報告では上記の2つの研究について紹介するほか,有権者の属性による割り当て法を用いた綿密な調査など,今後の研究の展望について報告する。

15:20-15:50 山縣芽生(大阪大学大学院 人間科学研究科 博士前期課程2年)

新型コロナウイルスによる肺炎への感染対策行動および外国人への排外意識に道徳観の個人差と日常的な外国人との接触頻度が及ぼす影響

2020年1月、中国湖北省武漢市を中心に新型コロナウイルスによる肺炎の感染症が流行し、相当数の感染者及び死亡者が報告され、WHOが緊急事態宣言を表明するなど感染拡大は深刻化している。世界中で刻一刻と事態が変化し、情報が交錯する中で、感染から免れるために人間はどのような行動を選択していくのだろうか。本研究では、道徳心理学(特にPurity; 清浄)の観点から新型コロナウイルスへの感染対策行動および外国人(特に最初の発生地とされる中国の人々)への排外意識に及ぼす影響を時系列的に検討する。本研究は、2020年1月31日に日本人1,200名を対象とした第1波調査が実施されて以降、現在も継続中である。現時点で新型コロナウイルスの感染拡大と収束の予測がつかないため、報告内容も調査状況に応じて一部変更することを予めご了承願いたい。

第2部:招待講演 16:00-17:20(ご講演を延期します)

片平健太郎先生(名古屋大学大学院情報学研究科)

【タイトル】心理学における計算論モデリングの可能性および注意点

行動の背後にある計算過程を強化学習モデル等のモデルで表現し,行動データからそのパラメータやモデル構造を推定する手法を計算論モデリングと呼ぶ。計算論モデリングは,神経科学のみならず,社会心理学や臨床心理学などの幅広い心理学領域でも重要なデータ解析手法となりつつある。計算論モデリングにより,従来の分析手法では無視されていた試行間の変動などからも情報を取り出し,それにより心的過程を推定したり,個人の行動の特徴をとらえることも可能になる。一方で,そこにはモデルの誤設定により誤った結論に到達してしまうという問題もある。本講演では選択課題におけるある種の認知バイアスや反応バイアスを検討した事例を紹介しながら,心理学における計算論モデリングの可能性や,使用の際の注意点についても議論したい。


異例の状況での開催となりましたが、いずれの発表についても、熱心な討論が交わされました。参加してくださいましたみなさま、まことにありがとうございました。今回延期された片平先生のご講演については、時期を調整した上で改めてお伝えします。ぜひご参加ください。

第26回KG-RCSPセミナー

「計算社会科学による人間・社会のわかり方」(笹原和俊氏・名古屋大学)

【日時】2020年2月21日(金) 15:00~17:00
【場所】関西学院大学梅田キャンパス 1405室
【発表者】笹原和俊(名古屋大学大学院情報学研究科、JSTさきがけ)

【概要】計算社会科学 (Computational Social Science)という新しい学際科学が誕生し、注目されている。その背景として、ウェブのソーシャル化やIoTの登場により人間行動が電子化されるようになったことや、ビッグデータを扱う数理・情報技術が発達したことがある。さらに、複雑化社会の新しい理解の仕方が求められていることもあげられる。本セミナーでは、計算社会科学の誕生経緯、アプローチ、最新動向を紹介した後、「分断」をテーマとする研究を紹介する。まず、フェイクニュースの温床となるエコーチェンバーに関する計算モデルについてで、人間の認知特性とソーシャルメディアの相互作用から意見の分極や社会的分断が生じることを示す。次に、食およびLGBTに関するソーシャルメディア分析で、コミュニティごとに特徴的な価値観や道徳観を持つことを示す。最後に、分断を緩和し、集合知を醸成するための技術的試み(Polyphony)について紹介する。


セミナーは,無事盛会にて終了いたしました.笹原先生およびご参加下さった皆様,ありがとうございました.