合同ゼミ」カテゴリーアーカイブ

第10回KG-RCSP合同ゼミ

KG-RCSP合同ゼミは,異なる大学・学部の複数のゼミが集い,メンバーの研究発表と外部ゲストの講演を交えた「多様性と類似性の相乗効果」の場です.毎回,ゼミメンバーの発表に加えて,興味深い研究をしておられる 「今,この人の話を是非聴きたい+学生たちに聴かせたい」と思える研究者をお招きして講演もしていただいています.

第10回目となる今回は,学生6名が自身の研究成果や研究計画を発表するとともに,関西学院大学文学部の伊藤友一先生・一言英文先生をお招きして行います.

【日時】2021年3月11日(木) 10:00-17:30
【場所】オンライン(Zoom)での開催


新型コロナウイルスの感染拡大が続いている状況を鑑み、今回の合同ゼミはオンラインで行います。参加には事前登録が必要です。

参加に際しては,以下のURLから事前登録をお願いします。アクセス要領が書かれた返信メールが届きます。ご不明な点は稲増一憲(k-inamasu@kwansei.ac.jp)にお問い合わせください。

https://zoom.us/meeting/register/tJMqcOyhrjwjGN2GwdSB_Dza697TrQlxrHxt
ミーティングID:977 7590 7929

登録完了後、「第10回KG-RCSP合同ゼミ確認」というタイトルで確認メールが届きます。「ここをクリックして参加」をクリックするか、ZoomにアクセスしてミーティングIDとパスワードを入力して参加してください。


第1部:ゼミメンバーによる発表

10:05-10:35 橘航大(関西学院大学社会学部4年)
自尊心の潜在的指標についての妥当性の検討―顕在指標の系統誤差の除去と収束的証拠の観点から―

近年の自尊心を用いた研究に潜在的自尊心を考慮した研究が増加している。しかし、顕在的自尊心尺度と潜在的自尊心尺度の間に相関が見られず、構成概念妥当性における収束的証拠が欠如しており、「同じ概念を測っていない」可能性が示唆されている。そこで、本研究では両尺度間の低い相関の説明をよりクリアにするために、アメリカと日本においてデータを取得し、心理統計学の点から自尊心の潜在的指標の妥当性を検討する。具体的には、妥当性の検証に大きな影響を及ぼす系統誤差(特に社会的望ましさバイアスと反応スタイル)に着目し、項目反応理論を用いて除去することで収束的証拠にどのような影響を与えるのかを検討した。 その結果、日本とアメリカの双方おいて収束的証拠が得られなかったことから、低い相関の原因が本研究で扱った系統誤差ではないことが示された。したがって、依然として潜在自尊心指標は、自尊心を測定できていない可能性が残ったままであることが示唆された。

10:35-11:05 中越みずき(関西学院大学社会学研究科博士前期課程2年)
日本の低所得層における保守政権支持の基礎的検討―システム正当化理論の観点から―

政治的混乱が相次ぐなかで、なぜこれほどまでに保守政権が長期化しているのか。日本の社会心理学領域においては、この問いに迫る試みはこれまでなされてこなかった。報告者は、保守政権存続を下支えする低所得層の政治態度に着目し「日本の低所得層はなぜ保守政権を支持するのか」というリサーチクエスチョンを掲げ、システム正当化理論の観点から3つの検討を行った。まず、社会調査データの二次分析によって、政治状況が全く異なる3時点のいずれにおいても、低所得層は、直接的・間接的に保守政党の優勢に寄与していることを明らかにした。次に、2つのweb調査によって、日本の政治文脈にもシステム正当化理論を適用しうること、そして、日本の低所得層においてシステム正当化傾向の高さは保守政党への投票へと帰結するが、システム正当化傾向の低さは政治不参加へと結びつくという、これまでのシステム正当化理論研究では議論されてこなかった「ねじれ」た構造の存在を示した。本結果は、日本における保守政権の長期化というパズルに対して、心理学に依拠した説明を与えることの有用性を示唆する。

(11:05-11:15 休憩)

11:15-11:45 長谷川凜人(関西学院大学文学研究科博士前期課程2年)
敬語と空間的上下との連合に社会的地位は介在するか

社会的地位はしばしば「上下関係」として表現される。Lu et al. (2014) は中国語の敬語と上下表象との連合に敬語の社会的地位が介在することを示した。本研究では、中国語同様に日本語の敬語が空間的上下と連合するか否かを明らかにするために、4つの実験を実施した。単語のカテゴリ判断後に矢印の向き (上 / 下) を判断する課題 (実験1) とその課題の前に個人主義・集団主義プライミング (実験2) を実施した結果、敬語―上下矢印の連合が認められたが、この連合に対する敬語の社会的地位の介在は明らかにならなかった。実験3・4では単語呈示後に画面上部 / 下部に呈示された標的の判断をする課題を実施した結果、敬語と上下位置との連合は認められなかった。以上から、日本語の敬語は上下矢印と連合するが上下位置とは連合しないことが明らかになり、敬語―上下矢印の連合に対する敬語の社会的地位の介在は明らかにならなかった。

11:45-12:15 牧野巧(関西学院大学文学研究科博士前期課程2年)
現実場面における周辺情報が表情認知に与える影響についての実験的検討

本研究の目的は周辺情報が表情から読み取れる感情に与える影響を検討することである。文脈効果が見られる写真にはどのような特徴があるのかを明らかにした上で、そのような写真の情報取得のタイムコースの実験的検討を行った。本研究ではニュース記事に掲載されている写真を使用し、顔のみの写真と背景のみの写真、写真全体から読み取れる情動カテゴリと情動価、情動強度を評価させた (調査)。情動強度が高いと評価されるほど、顔のみの写真と写真全体の情動価の差が大きくなることが示された。また調査で文脈効果が見られた写真を刺激として、背景の写真の呈示時間を操作した上で、顔から読み取れる感情の判断を行わせた。実験1の結果、50ミリ秒程度の背景写真の呈示で表情の判断に影響を与えることが示された。実験2では、実験1で正しく顔と背景の統合が行われていたことが示唆された。本研究の結果は、現実場面で文脈効果が見られる写真はスポーツ場面などの場面依存の効果であることを示唆した。またそのような写真は非常に早い段階から周辺情報を表情判断に取り入れることが可能であることが明らかになった。

(12:15-13:35 昼休憩)

13:35-14:15 大工泰裕(大阪大学人間科学研究科招へい研究員)
詐欺被害防止のための広報啓発の効果を阻害する心理学的要因に関する研究

日本における詐欺被害は未だ深刻な社会問題の一つである。本研究では「予防」・「看破」という詐欺の阻止機会と、これらの組織会での有効な介入手段と考えられる広報啓発に着目し、広報啓発の効果が阻害されてしまう要因を心理学的な観点から明らかにすることを目的とした。まず、「予防」に関しては、人々の詐欺に対する脆弱性認知が低い原因を責任帰属の理論から説明しようと試みた。次に、「看破」に関しては、詐欺の手口を知っているのに被害に遭うという現象を人間の情報処理過程から説明しようと試みた。発表ではこれらの研究から得られた実証的知見を共有し、効果的な詐欺の広報啓発について議論を行いたい。

14:15 -14:55 法卉(大阪大学人間科学研究科博士後期課程3年)
存在論的脅威が文化的世界観からの逸脱に及ぼす影響に関する実験的研究

新型コロナウイルス感染症の流行による死者数は2021年1月時点で世界で200万人を超え、その収束が未だに見えない状況である。しかし、このような危機的な状況において、マスクの着用やソーシャルディスタンスの維持など感染拡大防止策に、拒否的な態度を示している人がまだ大勢いる。1つの理由として、人々は元の生活スタイルを維持することで安心感が得られ、高まった死の恐怖を抑えようとすることが挙げられる。その裏付けとなる存在脅威管理理論は、人の多くの行動は死の恐怖の軽減によって動機づけられている(死の顕現化効果)と仮定している。しかし、今のような危機的状況を乗り越え、混乱の収束を迎えるためには、人は既存規範から離れ、新規範やそれによって生じる生活スタイルの変化を受け入れなければならない。ただし、そのような「逸脱」が生じるプロセスは、従来の存在脅威管理理論の枠組みだけでは説明することができない。そこで、本研究では「集団の死」と「突然の死」の想起が既存規範からの逸脱を生じさせる可能性があると仮定して検討を行い、その結果をご報告する。また、長く問題視されてきた死の顕現化効果の再現性について、本研究は死の顕現化操作の自由記述データを分析することにより、「死の想起は存在論的脅威を喚起する」との基本的仮定を検証し、存在脅威研究では初の試みとして死の顕現化操作の妥当性について議論したい。

(14:55-15:10 休憩)

第2部:招待講演

15:10 -16:10 伊藤友一先生(関西学院大学文学部)
未来思考のプロセスと機能

ヒトは自身が将来経験し得る事象について想像する能力を有している。それによって,将来への備えが可能になり,より豊かな生活が維持されていると考えられる。そのような能力は未来思考と呼ばれている。未来思考をすることは日々の認知活動に様々な影響を及ぼしている。本発表では,未来思考の持つ機能に関する研究,及び未来思考を支えるプロセスに関する研究を紹介する。特にプロセスについては,記憶システムに焦点を当てて議論する。

(16:10-16:20 休憩)

16:20 -17:20 一言英文先生(関西学院大学文学部)
社会文化的文脈における幸福感の意味と働き

幸福度ランキングなど幸福を定量化する試みは、近年社会の様々なセクターで関心を集めている。しかし、そこで測定されている幸福感の含意に見られる系統的な社会文化的多様性については研究の余地があり、特に幸福感の関係的含意や、その働きについては、社会文化的文脈や人のあり方を交えた検討が一定の意義を持つと考えられる。本発表では、幸福感の関係的含意としての協調的幸福感を測定した研究を紹介し、社会文化的文脈との関連と、その生涯発達パターンや健康との関連の文化差について論じる。特に、健康との関連においては、集団主義の適応的機能としての行動免疫に、身近な関係性で感じられる協調的幸福感が関わる可能性を検討した研究を紹介する。

第9回KG-RCSP合同ゼミ

KG-RCSP合同ゼミは,異なる大学・学部の複数のゼミが集い,メンバーの研究発表と外部ゲストの講演を交えた「多様性と類似性の相乗効果」の場です.毎回,ゼミメンバーの発表に加えて,興味深い研究をしておられる 「今,この人の話を是非聴きたい+学生たちに聴かせたい」と思える研究者をお招きして講演もしていただいています.

第9回目となる今回は,関学の2名の学生が自身の研究成果や研究計画を発表するとともに,前回延期となった名古屋大学情報学研究科の片平健太郎先生をお招きして行います.


新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、今回の合同ゼミはオンラインで行います。


【日時】2020年8月4日(火) 10:00-14:30

【場所】オンライン(Zoom)での開催

第1部:ゼミメンバーによる発表

10:10-11:10 小林穂波(文学研究科博士前期課程2年)
刺激間距離によるフランカー干渉の変化のdiffusionモデル

フランカー課題における視覚的注意処理のモデルとして、試行の最初には刺激全体に広く分散していた注意が、試行内の時間経過に伴って標的位置に収斂していく過程を表現した数理モデルが提案されている (White, Ratcliff, & Starns, 2011)。本研究はベイズ階層diffusionモデルを用いて先行モデルを拡張し、刺激間距離の増加に伴いフランカー刺激による干渉が低下する現象を表現できるかを検証した。その結果、モデルによる予測は実験で得られた反応時間データのパターンと一致しなかった。そこで新たに試行内の情報集積率を標的に類似した情報が入力される情報全体に占める割合として算出するモデルを作成し,検証した。そして,試行開始時の注意分散の形状を正規分布ではなく収斂度がより高い分布で表現することによって,偏心度の増加に伴う干渉効果の減少をよりよく予測できることを示した。

(11:10-11:20 休憩)

11:20-12:20 水野景子(社会学研究科博士前期課程2年)
繰り返し社会的ジレンマゲームにおける意思決定モデル ー統計モデリングによるアプローチー

社会的ジレンマ状況での意思決定を繰り返すと、初回付近は高い協力率が次第に低下することが知られている。しかし、協力低下のメカニズムはよく分かっていない。本研究では、初期協力率の高さを説明できる社会的価値志向性(SVO)と学習モデルを組み合わせることで協力低下のメカニズムを表現したモデルを構築し、二度の実験によるモデルの検証を行った。その結果、①社会的ジレンマの利得構造、②他者の協力に対する期待(信念)の両方を学習するモデルが、そのどちらかを学習するモデルや強化学習モデルよりもデータにフィットすることが示された。

(12:20-13:00 休憩)

第2部:招待講演 13:00-14:30
片平健太郎先生(名古屋大学大学院情報学研究科)
【タイトル】心理学における計算論モデリングと統計モデリングの接点

行動の背後にある計算過程を強化学習モデル等の数理モデルで表現し,データからそのパラメータや構造を推定する手法を計算論モデリングと呼ぶ。計算論モデリングは,社会心理学や臨床心理学などの後半な心理学領域でも用いられるようになっている。一方で,一般のデータサイエンスにおいては統計モデリングと呼ばれる枠組みが中心的な方法論となっている。心理学で伝統的に用いられてきた分散分析や因子分析などの分析手法も統計モデリングの一つとみなせる。計算論モデリングと統計モデリングの境界線は明確ではなく,共通する構成要素も多い。本講演では,演者なりの視点で両手法の相違点や共通点について整理する。具体的な例として,ある種のギャンブル課題における選択行動の分析を取り上げ,選択履歴の影響や認知バイアスの影響を検討した事例を紹介する。それらを通して,計算論モデリングと統計モデリングそれぞれの利点や,使い分けの方法,そして両手法を統合的に用いる枠組みについて議論したい。

第8回KG-RCSP合同ゼミ

KG-RCSP合同ゼミは,異なる大学・学部の複数のゼミが集い,メンバーの研究発表と外部ゲストの講演を交えた「多様性と類似性の相乗効果」の場です.毎回,ゼミメンバーの発表に加えて,興味深い研究をしておられる 「今,この人の話を是非聴きたい+学生たちに聴かせたい」と思える研究者をお招きして講演もしていただいています.聴講・議論への参加は,ゼミ内外,学部生/大学院生/職業研究者等々を問わず,どなたでも歓迎します.

第8回目となる今回は,関学・阪大の5名の学生が自身の研究成果や研究計画を発表するとともに,招待講演は名古屋大学情報学研究科の片平健太郎先生をお招きして行います.


新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、片平健太郎先生をお招きして、広く公開された形で合同ゼミを行うことについては中止としたいと思います。なお、片平先生のご講演につきましては、状況が改善し次第、KG-RCSPセミナーとして行っていただく予定となっております。その際には改めてアナウンスいたしますので、ぜひご参加ください。ただし、ゼミ関係者以外の方はご一報いただければ幸いです。

会場は、参加予定人数が十分距離をとって着席できる広さです。また、消毒用アルコールを設置します。マスクもいくつか準備しますが、着用される方はご自身での持参にご協力ください。また,高熱やひどい咳があるなど体調不良の方は、無理な参加はお控えいただければ幸いです。


【日時】2020年3月6日(金) 13:00-17:30

【場所】関西学院大学西宮上ケ原キャンパス 社会学部202教室

第1部:ゼミメンバーによる発表

13:05-13:35 水野景子(社会学研究科博士前期課程1年)

繰り返し社会的ジレンマゲームの意思決定モデルの探索―統計モデリングによるアプローチ―

繰り返しのある社会的ジレンマゲーム(公共財ゲーム)ではゲームを繰り返すにつれ、協力率が下がることが示されてきた。本研究では、他者が協力するかどうかの期待がゲームを繰り返すにつれて更新され、それが自身の持つ平等性(不平等忌避傾向)との交互作用によって協力に影響を及ぼす意思決定モデルを仮定から導出した。社会性を持たないエージェントを仮定した強化学習モデルをベンチマークモデルとしてモデル比較を行った結果、導出したモデルのほうが社会的ジレンマゲームの行動データをよく説明することが示された。
繰り返しのある社会的ジレンマゲームにおける意思決定モデルを仮定から導出し、構築した本研究の知見は、人の協力行動のメカニズムを検討する基礎研究として位置づけられると考えられる。当日は、実験ゲーム研究において仮定からモデルを導出し、データで検証することの意義について議論したい。また、本研究の知見が今後どのような研究に繋がるかについて意見を頂けると幸いである。

13:35-14:05 柏原宗一郎(社会学部4年)

排外主義の規定要因としてのZero-Sum Belief

日本において、旅行者だけではなく労働者についても外国人は増加傾向にある。しかし、ヘイトスピーチなど外国人に対する否定的な態度が社会的に問題になっている。Esses et al(1998)では「誰かが得れば他の誰かが失う」というZero-Sum Beliefが移民への否定的な態度を予測したとしているが、純粋なZero-Sum Beliefなのか外国人一般に対する態度なのかについての弁別が行われていない。本研究では、より一般的なZero-Sum Belief尺度を用い日本においても排外主義的態度を予測するか検討した。研究1では大学生を対象に実験を行い、外国人IATや外国人増加への態度を統制した上でも、一般的な信念としてのZero-Sum Beliefが効果を持っていた。研究2では一般人を対象にWeb調査を行い、他の排外主義尺度も用いて検討し、外国人増加への態度を統制した上でも効果を持っていた。更に、Zero-Sum Belief尺度についての検討を行い、資源の有限性、二分法的思考法、個人的相対的剥奪といた構成要素に分解されることが示された。

14:05-14:35 小林穂波(文学研究科博士前期課程1年)

学習と経験が視覚的注意の誘導を促進するメカニズムの解明

身の回りの膨大な視覚情報を処理するためには、そのときの目的や課題に応じて情報を取捨選択する必要があります。私の研究では、このような視覚的注意による選択を容易にするために関与しているさまざまな要因のうち、記憶・学習・習慣といった過去の経験による注意誘導に注目して、視覚情報処理における選択機能の解明を目指しています。特に視覚情報の空間的な関係性や確率的情報による情報処理の効率化に関する研究をこれまで行ってきました。今後は視覚的注意研究において一般的な反応時間指標に加えて、眼球運動指標を用いた実験を行い、さらに認知モデリングを活用することで、学習および習慣が注意処理の効率性に及ぼす影響を検証します。本発表ではこれまでの研究成果に基づき、今後の研究計画についてお話しします。

(14:35-14:50 休憩)

14:50-15:20 中越みずき(社会学研究科博士前期課程1年)

困窮層における保守主義の心的基盤の解明

日本において,なぜこれほどまでに保守政権が支持され続けるのかは大きなパズルであり続けている。システム正当化理論では「なぜ困窮している人々が,時として政治的・経済的保守主義を示すのか」という問題に取り組んできた。ただし,従来の研究は,経済を巡って左派と右派の明確な対立が存在する国で検討されており,経済意見がイデオロギー対立となり得ていない日本においても当該理論によるアプローチが可能かは不明であった。

そこで,報告者はまず,日本の有権者を対象としたweb調査によって,他国の先行研究と同様に,格差を是認する傾向である経済的システム正当化 (ESJ) が保守イデオロギーを媒介して保守政権支持を予測することを示し,日本の有権者にも当該理論を適用しうることを確認した。次に,低収入層におけるESJの役割を明らかにするため,第25回参議院議員選挙の直後に調査を行った。その結果,一定程度にESJが高じると,高所得者よりも低所得者の方が保守政党へ投票する確率が高くなることが示唆された。

本報告では上記の2つの研究について紹介するほか,有権者の属性による割り当て法を用いた綿密な調査など,今後の研究の展望について報告する。

15:20-15:50 山縣芽生(大阪大学大学院 人間科学研究科 博士前期課程2年)

新型コロナウイルスによる肺炎への感染対策行動および外国人への排外意識に道徳観の個人差と日常的な外国人との接触頻度が及ぼす影響

2020年1月、中国湖北省武漢市を中心に新型コロナウイルスによる肺炎の感染症が流行し、相当数の感染者及び死亡者が報告され、WHOが緊急事態宣言を表明するなど感染拡大は深刻化している。世界中で刻一刻と事態が変化し、情報が交錯する中で、感染から免れるために人間はどのような行動を選択していくのだろうか。本研究では、道徳心理学(特にPurity; 清浄)の観点から新型コロナウイルスへの感染対策行動および外国人(特に最初の発生地とされる中国の人々)への排外意識に及ぼす影響を時系列的に検討する。本研究は、2020年1月31日に日本人1,200名を対象とした第1波調査が実施されて以降、現在も継続中である。現時点で新型コロナウイルスの感染拡大と収束の予測がつかないため、報告内容も調査状況に応じて一部変更することを予めご了承願いたい。

第2部:招待講演 16:00-17:20(ご講演を延期します)

片平健太郎先生(名古屋大学大学院情報学研究科)

【タイトル】心理学における計算論モデリングの可能性および注意点

行動の背後にある計算過程を強化学習モデル等のモデルで表現し,行動データからそのパラメータやモデル構造を推定する手法を計算論モデリングと呼ぶ。計算論モデリングは,神経科学のみならず,社会心理学や臨床心理学などの幅広い心理学領域でも重要なデータ解析手法となりつつある。計算論モデリングにより,従来の分析手法では無視されていた試行間の変動などからも情報を取り出し,それにより心的過程を推定したり,個人の行動の特徴をとらえることも可能になる。一方で,そこにはモデルの誤設定により誤った結論に到達してしまうという問題もある。本講演では選択課題におけるある種の認知バイアスや反応バイアスを検討した事例を紹介しながら,心理学における計算論モデリングの可能性や,使用の際の注意点についても議論したい。


異例の状況での開催となりましたが、いずれの発表についても、熱心な討論が交わされました。参加してくださいましたみなさま、まことにありがとうございました。今回延期された片平先生のご講演については、時期を調整した上で改めてお伝えします。ぜひご参加ください。

第7回KG-RCSP合同ゼミ

KG-RCSP合同ゼミは,異なる大学・学部の複数のゼミが集い,メンバーの研究発表と外部ゲストの講演を交えた「多様性と類似性の相乗効果」の場です.毎回,ゼミメンバーの発表に加えて,興味深い研究をしておられる 「今,この人の話を是非聴きたい+学生たちに聴かせたい」と思える研究者をお招きして講演もしていただいています.聴講・議論への参加は,ゼミ内外,学部生/大学院生/職業研究者等々を問わず,どなたでも歓迎します.

【日時】2019年7月31日(水) 13:00-17:30
【場所】関西学院大学西宮上ケ原キャンパス E号館102教室

第1部:ゼミメンバーによる発表

13:10-14:00 白井理沙子(関西学院大学小川ゼミD3)
直観的な道徳判断の基盤となる知覚・認知処理の役割の解明

従来の研究は,道徳判断に意識的な思考が重要であることを示してきた。それに反してHaidt (2001) は,道徳判断の主な源泉は情動処理を含む直観にあると主張した。しかし,情動が生起しない場合でも即座に道徳判断が下される場合もあり,直観的な道徳判断のプロセスには不明な点が多い。これを解明するためには,素早く判断を下すうえで重要な役割を果たす初期の知覚・認知処理において,道徳情報がどのような影響を及ぼしているのかを明らかにする必要がある。これまで多くの研究が,ヘビやクモのようなネガティブ情動と関連した刺激は早く気づかれたり,注意を方向づけたりすることを示してきた。道徳と関連した情動情報はこうした生物学的な情動刺激と同じように視覚的気づきや注意処理に影響を及ぼすのだろうか。今回の合同ゼミでは,連続フラッシュ抑制,クラウディング,高速逐次視覚提示法等によって道徳情報が知覚・認知処理に及ぼす影響を調べた研究を報告する。また,個人の倫理的価値観の多次元的な組み合わせからなる政治的信条にも焦点を当て,個人の政治的信条と知覚・認知処理の関連性について検討した研究も報告する。

14:05-14:55 大工泰裕(大阪大学社会心理学研究室D3)
詐欺の手口に関する情報が詐欺への抵抗に及ぼす影響

詐欺被害は長きに渡る社会問題の一つであるが、未だにその解決策は見つかっていない。最大の謎としてあげられるのが、なぜこれほどまでに典型的な手口が知れ渡っているにもかかわらず、被害が増え続けるのかということである。実際、警察庁の調査では被害者のおよそ7割の人々が手口を知っているのにもかかわらず騙されたと報告している。この謎を解明しなければ、広報啓発などの詐欺対策は効果を得られない。
発表者はこの謎を解明すべく、「詐欺被害の手口の情報をどう処理しているのか」、「得られた手口の情報をどのように使用しているのか」という二側面に着目し、研究を行ってきた。当日はこれらの研究結果を報告するとともに、今後の方向性についても議論したい。

15:00-15:50 中村早希(関西学院大学小川ゼミ大学院研究員・大学院奨励研究員)
複数源泉・複数方向の説得状況における説得の2過程モデルの適用可能性

複数人から異なる方向に説得される状況(例えば、選挙)は多々あるにも関わらず、これまでの説得研究では、1人から説得を受ける状況ばかりが注目されてきた。発表者は、複数人から異なる方向に説得される状況での態度変容プロセスの解明を目的とした研究を進めている。本発表では、説得の受容プロセスに関する主要なモデル(説得の2過程モデル)が、この状況においても適用可能であるかどうかを検証した実験について紹介する。具体的には、(1)説得者間で唱導方向が必ずしも対立しない場合(「AとBどちらが良いか」)と(2)対立する場合(「Aについて賛成か、反対か」)の2つの場面を用いて検討した。これらの研究成果について発表し、議論を行いたい。

第2部:招待講演

16:00-17:30 北村英哉先生(東洋大学)

【タイトル】穢れ忌避について

【概要】人の道徳基盤やモラルのあり方について、さまざまな議論が見られるが、清浄さ(purity)について、さらに詳細な研究が必要であろうことは、村山・三浦(2019)においても示されている。道徳基盤のあり方と共に、日本文化を十分勘案した清浄さを検討するにあたって、「穢れ」概念にも配慮し、新たな清浄志向/穢れ忌避傾向尺度を構成した。穢れに関わる実験刺激に対するネガティブ反応の検討など実験知見も交えながら、穢れ忌避傾向の検討結果を示す。


いずれの発表・講演についても熱心な討論が交わされました。北村先生、ご参加下さった皆様ありがとうございました。